冷酷社長な旦那様が「君のためなら死ねる」と言い出しました~ヤンデレ御曹司の激重愛~

 私は緩む口元を隠さず、首を横に振る。

「ううん、私もすごく楽しみだったから嬉しいです。今、結構ドキドキしてるんですよ」

 私も照れ笑いを浮かべてさらに腕にくっつくと、頭上から深いため息が聞こえてきた。

 顔を上げると、彼はなにか悩むようにもう片方の手を額に当てている。

「……こんなに可愛い子が俺のものなんだって見せびらかしたい気持ちと、今すぐ引き返してもう出られないくらいぐちゃぐちゃに愛したい気持ちとの葛藤が」
「引き返しはしませんよ」

 欲望を一切隠さない彼に、食い気味にきっぱり返して笑った。こんなやり取りすらも楽しい。

 カフェで軽くランチをしてから、天気がいいのでみなとみらいの街をぶらぶらして映画館へ向かった。

 私たちが選んだのは医療ドラマの劇場版。元々好きなジャンルなのだが、シェーレで働き始めてからますます興味が湧くようになった。

 映画の内容は期待通りのもので、のめり込んで見ていたので約二時間はあっという間だった。暗い中、時々顔を近づけて小声で話す瞬間にドキッとしていたのは秘密にしておく。

 映画館を出た今、午後五時半を過ぎたところ。すっかり夕闇に飲み込まれた二月上旬の街は寒さも厳しいけれど、繋いだ手は温かいし心もほくほくしている。