学園最強の兄は妹を溺愛する

「そんじゃ、俺様が直々にこいつらの後始末つけてやるから、彩智は目と耳塞いで——」

「だ、ダメです‼」

 思わずお兄様の腕にぎゅっとしがみつく。


「わたしは大丈夫。なにもありませんでしたから。こ、この方たちと遊ぶ約束をしたんです、わたし。それで……」

「それで、こんな危ないとこに連れ込まれたんでしょ? だから——」

「ち、違います! ……そう、道に迷ってしまって。ですよね、みなさん!」

 腰を抜かしたままの男子がコクコクと何度も首を縦に振る。


「本当に? ウソついてたら、舌も引っこ抜くよ?」

「ウソじゃ、ないっす。な、なあ?」

 蒼真さんの回し蹴りを喰らって地面に伸びたままの男子に、慌てて同意を求める。


 彼は両手を地面について、なんとか体を起こすと、

「み、御門さんの大切な妹さんを……危ない目に遭わせるわけ……ないじゃないっすか」

 と、息も絶え絶えといった感じで同意する。


「ふうん。じゃあ、コレはなに?」

 わたしのすぐそばで荒い息をして片膝をついたままの金沢さんを、お兄様が指さす。


「……転んだだけだ。大したケガじゃない」

 金沢さんが、低い声で言う。


「ほ、ほら、金沢もそう言って……ひぃっ」