学園最強の兄は妹を溺愛する

「ぐっ……」

 金沢さんがとっさに腕で頭を庇うと、棒が真っ二つに折れ、痛そうに顔を歪める。


 そこへ目の前に立っていた男子が、拳を固め、間髪入れずに襲い掛かる。


「ナンバー3とか言われて、いい気になってんじゃねえよ!」

 ガツンッ! と骨と骨のぶつかる音がする。


「や、やめ……やめて、ください……」

 体の震えが止まらず、大きな声を出したいのに蚊の鳴くような声しか出てこない。


 いくら金沢さんが強いといっても、三方向から間髪入れず襲われ、金沢さんがどんどんボロボロになっていく。


「やめて……しんじゃう……」

 さっきまでなんとか両足で立っていた金沢さんが、片膝をつく。


「なんだあ? 威勢がよかった割に、もう終わりかあ?」

「ナンバー3が聞いて呆れるぜ」

「せめてもうちょっと楽しませろよな」


 金沢さんを見下ろし、三人がヘラヘラ笑っている。


 助け……なくちゃ……。


 ぎゅっと胸元を握り締め、ヨロヨロと金沢さんの元まで歩いていく。


「お願い。もう、やめて」

 震えそうになる声を必死に堪え、金沢さんの前に両手を広げて立った。


「そろそろいいんじゃね? 自分の無力さをこいつにも思い知らせてやろうぜ」

「こいつの代わりに、俺ら楽しませてくれるってことでいーんだよな、彩智ちゃん?」

 イヤな笑みを浮かべた男子が、わたしの方へと手を伸ばしてくる。


「ふふっ、いいねえ、その怯えた顔。逆にそそるわ」


 イヤ……怖い……!