学園最強の兄は妹を溺愛する

 きっと、なにかあったのですね。


 これ以上ツッコんで聞くべきではないと判断したわたしは、お弁当へと視線を戻した。


 キレイに巻かれた卵焼きが、今日もおいしそう。


 パクリと頬張ると、甘くて優しい味が口の中いっぱいに広がって、自然と笑みが零れる。


 小さなため息が聞こえたかと思ったら、金沢さんはなにも言わず、校舎の中へと戻っていってしまった。


 なんだかわたしが金沢さんのことを追い出してしまったみたい。

 申し訳ないことをしてしまったわ。


 しゅんとしたまま残りのお弁当を口に運んでいると、ガチャッ! と勢いよく扉が開いた。


 はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……と荒い呼吸をしながら姿を現したのは、蒼真さんだった。

 珍しくすごく慌てているみたい。


「どうしたのですか?」


 わたしの問いには答えず、屋上をパパッと見回すと、蒼真さんが焦ったような表情でわたしを見る。


「アイツは?」

「アイツって……どなたですか?」

「アイツだ。さっきまでここにいた、金髪ロン毛のアイツだよ。二年の校舎からここの屋上は丸見えなんだよ」

「先ほど校舎内に戻って行かれましたが」

 わたしがそう言うと、蒼真さんが、はぁーと大きなため息を吐く。