学園最強の兄は妹を溺愛する

「ちげーって。あんたに『乱暴なことはしないで』って言われたからって、二時間ぶっ通しで狭い個室で説教漬け。……いや、三時間だったか? とにかく、『彩智になにかあったらどう落とし前つけてくれるんだ』とか、『彩智に二度と怖い思いさせんじゃねえ』とか、ネチネチネチネチネチネチネチネチと。かと思いきや、あんたの昔の写真見せられて、延々思い出話。途中で寝落ちしたら、叩き起こされて最初からやり直しって……むしろ殴られた方がマシだったわ」

 そのときのことを思い出したのか、金沢さんのキレイなお顔がぐしゃりと歪む。


「まあ、なんだ……とにかく、この前は怖い思いさせて悪かったな」

「いえ、もう大丈夫ですから。お気になさらないでください」

 ボソボソと言って小さく頭を下げる金沢さんに、慌ててパタパタと両手を左右に振って見せる。


「あの……金沢さんも、やっぱりこの学園のトップになりたくて、ここにいらっしゃったんですか?」


 蒼真さんとケンカをなさったということは、そういうことですよね。


「まあな。そりゃあみんなそう思って来るだろ。御門さんボコして自分がトップに立つって。けど、すぐに現実を思い知るんだよ。やっぱりここでも自分はトップになれないのか……って」


『ここでも』?


「えっと……金沢さんは、本当は別のところでトップになりたかったっていうことですか?」

「別にっ、そういうわけじゃ……」

 金沢さんは、バツの悪そうな顔をふいっとそむけた。