学園最強の兄は妹を溺愛する

「……ああ、御門か。なんの用?」

「えっと、金沢さんに用があるというわけではなくて。ここでお弁当を食べようと思って来たのですが……お邪魔でしょうか?」

 金沢さんのご機嫌を伺いながら、おそるおそる尋ねる。


「別に。俺の場所ってわけでもないし。好きにすれば?」

「よかったあ。ありがとうございます!」


 金沢さんに許しをもらって、わたしは柵にもたれるようにして座ると、さっそくお弁当を広げた。


「いや、ホントにここで食うのかよ。なんつーか、意外とマイペースだな、あんた」

 金沢さんが、ふっと小さく笑う。


「や、やっぱり、ダメでしたか⁉ ごめんなさい、お邪魔——」

「だから、いーって。だいたいあんたのこと、こっから追い出したなんてあんたの兄貴に知れたら……」

 そう言うと、金沢さんが一瞬ブルッと体を震わせる。


「どうしたんですか?」

「いや、ちょっと……この前のあんたの兄貴の制裁を思い出しただけ」

「制裁って……ひょっとしてお兄様、金沢さんに乱暴なことをなさったんですか⁉」


 乱暴なことはしないでって、わたし、お願いしたのに。


「申し訳ありませんでした! わたしの具合が悪くなってしまったばっかりに、金沢さんにご迷惑を——」