「ごめんね、彩智。僕が弱いから、彩智のこと、ちゃんと守れなかった。僕、もっともっと強くなるから」
病院に運ばれたお兄様は緊急手術を受け、一命を取り留めた。
「お願い、いなくならないで。いなくなっちゃヤダ。ヤダよ……」
目を覚ましたお兄様の第一声に、ボロボロととめどなく涙が零れ落ちる。
ある日突然目の前からいなくなってしまったお母様と同じように、お兄様もいなくなってしまうような気がして、不安に胸が押しつぶされそうになってしまったの。
「大丈夫。僕はいなくなったりしないよ。ずっと彩智のそばにいて、彩智を守る」
そう言ってから、「……だって、あの人とそう約束したから」とつぶやくように続けた。
「あの人? あの人って、誰?」
わたしの問いには答えず、お兄様はそのまま再び深い眠りへと落ちていった。
この連れ去り未遂事件以降、わたしは男性に触られると発作を起こし、気を失うようになってしまったの。
見知らぬ男性だけじゃなく、里見さんのようにずっと近くで仕えてくれている男性に対してさえその発作は起こった。
——ただ一人、お兄様を除いて。
病院に運ばれたお兄様は緊急手術を受け、一命を取り留めた。
「お願い、いなくならないで。いなくなっちゃヤダ。ヤダよ……」
目を覚ましたお兄様の第一声に、ボロボロととめどなく涙が零れ落ちる。
ある日突然目の前からいなくなってしまったお母様と同じように、お兄様もいなくなってしまうような気がして、不安に胸が押しつぶされそうになってしまったの。
「大丈夫。僕はいなくなったりしないよ。ずっと彩智のそばにいて、彩智を守る」
そう言ってから、「……だって、あの人とそう約束したから」とつぶやくように続けた。
「あの人? あの人って、誰?」
わたしの問いには答えず、お兄様はそのまま再び深い眠りへと落ちていった。
この連れ去り未遂事件以降、わたしは男性に触られると発作を起こし、気を失うようになってしまったの。
見知らぬ男性だけじゃなく、里見さんのようにずっと近くで仕えてくれている男性に対してさえその発作は起こった。
——ただ一人、お兄様を除いて。



