そんな声と同時に、男に抱えあげられていたお兄様が地面に投げ飛ばされた。
お兄様の口を塞いでいた手をぎゅっと反対の手で握り込んでいたから、きっとお兄様がその手を噛んだに違いない。
「彩智を離せ!」
地面から飛び起きたお兄様が、わたしを羽交い締めにしている男に飛びかかると、男は長い足でお兄様を蹴り飛ばし、お兄様はまた地面に転がった。
「カハッ、ケホッ……」
地面に両手をついて体を起こすと、お兄様は激しく咳き込んだ。
それでもお兄様は諦めず、何度も何度も立ち上がっては男にぶつかっていき、そのたびに地面に叩きつけられた。
もうやめて……お兄様をこれ以上傷つけないで……お兄様、死んじゃう……。
わたしの両目からボロボロと大粒の涙が零れ落ちる。
「——なにをしている!」
「ちっ、気付かれたか。おい、行くぞ!」
人の声と複数の足音が近づいてくると、男たちはわたしたちをその場に置いて慌てて立ち去った。
「彩智様! 陽介様!!」
わたしたちがお屋敷を抜け出したことに気付いて、慌ててあちこち探し回っていたのか、いつもはキレイに整えられている里見さんの髪がひどく乱れていた。
「ご無事ですか⁉ ——誰か、早く救急車を!」
お兄様のご様子を見た里見さんは、顔面蒼白で救急車を呼び、わたしはそのまま気を失った。
お兄様の口を塞いでいた手をぎゅっと反対の手で握り込んでいたから、きっとお兄様がその手を噛んだに違いない。
「彩智を離せ!」
地面から飛び起きたお兄様が、わたしを羽交い締めにしている男に飛びかかると、男は長い足でお兄様を蹴り飛ばし、お兄様はまた地面に転がった。
「カハッ、ケホッ……」
地面に両手をついて体を起こすと、お兄様は激しく咳き込んだ。
それでもお兄様は諦めず、何度も何度も立ち上がっては男にぶつかっていき、そのたびに地面に叩きつけられた。
もうやめて……お兄様をこれ以上傷つけないで……お兄様、死んじゃう……。
わたしの両目からボロボロと大粒の涙が零れ落ちる。
「——なにをしている!」
「ちっ、気付かれたか。おい、行くぞ!」
人の声と複数の足音が近づいてくると、男たちはわたしたちをその場に置いて慌てて立ち去った。
「彩智様! 陽介様!!」
わたしたちがお屋敷を抜け出したことに気付いて、慌ててあちこち探し回っていたのか、いつもはキレイに整えられている里見さんの髪がひどく乱れていた。
「ご無事ですか⁉ ——誰か、早く救急車を!」
お兄様のご様子を見た里見さんは、顔面蒼白で救急車を呼び、わたしはそのまま気を失った。



