王子様との両片想いな闇落ち学園生活 〜封印される記憶〜

 彼も同じように起き上がった。

「どんな男が好みなのかって前に聞いたでしょ」
「あ、ああ」
「教えてあげるわ」

 誘惑するように彼を見上げる。

「私のために傷ついてくれる人が好き。あなたに、地獄に落ちろとかくたばれとか言うと平気な顔をしながら少しは傷ついていたでしょう。それがたまらなく好き。だからこれからもあなたを傷つけると思うわ」
「……そんな趣味があったのか」
「そうよ。今日のデートもお決まりコースすぎて、あなたらしさがないなって思ったわ」
「やっぱりそうか……」

 演劇とか食事とか贈り物とか、全部嬉しかった。でもそれだけ言ったところであなたは信じない。

「そう言うと傷ついてくれるでしょう? それが好き。これからもお決まりコースのデートをして、私に傷つけられてよ」
「……部屋でしりとりでもいい気がしてきたな」
「いいわよ。今度する?」
「さすがに縛りは入れよう。愛の言葉しりとりはどうだろう。文章しりとりだ」
「私に何を言わせる気よ」
「愛の言葉しりとりで、愛以外の何を語る気なんだ」

 定番デートより楽しそうな気がしてきた。

「私、青空の下でデート、まだあなたと一度もしたことがないのよね」
「うっ」

 ちゃんと昼間の記憶はあるけど、この人、責められるのも楽しんでいるような気がするのよね。というより安心しているような。責められることで愛を実感できるのかもしれない。

 ――どこまでも歪んだ人。

「青空の下で記憶の戻った私とデートしてくれるなら、場所はどこでもいいわ」
「分かったよ。君のためなら僕はこれからもどれだけでも傷つこう」
「ええ。どこまでも定番を狙って、私に傷つけられてちょうだい」
「……昆虫採集デートに誘っていいかな」
「虫はちょっと……」

 あの学園生活四年間。
 私もそれなりに、どこか楽しんでいたと思う。絶対教えてあげないけど。

 一年後、妻になった私に彼は言う。

「君のために特別な部屋を用意したんだ。僕はここでの記憶を毎回失う。これは君への贖罪だ。さぁ、僕に何をする? 僕たちの関係性にヒビが入りそうなほどに傷つけてくれても構わないよ」

 ――って。

 私たちの闇落ち学園生活は闇落ち結婚生活へと形を変え、どこまでも歪みながら幸せに私たちらしく続いていく。

 生きている限りずっとね!


【完】