大嫌いな王子様 ー後編ー

プルルルー…

出ないか。。


諦めて電話を切ろうとした時

「もしもし」

出た!!!


「あっ、もしもし」

「どうした?」


お互い期末があったり、暁斗くんの仕事が忙しかったりであの旅行以来会えてなくて、電話はいつぶりだったかな。


「ううん、なにしてるかなぁと思って」

「俺は今日から夏休みだから、仕事漬け」


あ、メッセージで昨日終業式って言ってたな。


「そっか」

「いおは今日終業式だろ?面談も終わったのか?」

「うん…終わったよ」


暁斗くんの声が聞けてなんだかホッとした。
ホッとしたせいか、なんだか


「いお?」


泣きそうになる。


「今からバイトなの。また連絡するね」

「待て、俺やっと仕事がー…」


プツッ

暁斗くん、なにか言ってくれてたけど聞かずに切ってしまった。

自分からかけたくせに勝手すぎる。
でも、あのままだと泣いてしまいそうだったから。

バイト終わったら勉強しよう。
就職するにしても、学校の試験はちゃんと成績取らなきゃね。



ーーーーーーーーーーーーーー


「お疲れ様でしたー」

バックルーム(スタッフオンリーの場所)から店内に出る。

「ぎゃっ!!!」

私は店内で大声を出してしまった。


「どうしたの!?」

バックルームからオーナーの奥さんが心配してやってきてくれた。


「テメェ…俺に向かって叫んだのか?」


いや、だってさ店内…というか、バックルームのドア開けたところにいるなんて思わないじゃんか!


「あらっ!暁斗さんじゃない♪伊織ちゃんのお迎え?」

「こんばんは。はい、迎えに来ました」


飯田さんじゃないの!?
暁斗くん、仕事は!?



「あっ」

私のバッグを持ってくれた。


「帰るぞ」

もう…なんで

なんでこのタイミングで会っちゃうかな。



暁斗くんの少しだけ後ろを歩く。


「おい、なんで隣じゃねぇの?」

「えっ別に深い意味は…」


暁斗くんが立ち止まって私を見る。


「いお、今日なんか変」


ドキッ!!

なんか言わなきゃ…えっと…


「え?いつも通りだけど?なんで??」


ガシッ
腕を掴まれた。


「なら、なんで電話も今も泣きそうになってんだよ」


あ、やっぱり敵わない
この人には。


自分でもわかんないんだもん。
このモヤモヤの気持ちが。


成績落ちてたのは自分がただただ悪いことなのに、頑張りきれてない自分、欲深くなってる自分

それが全部怖くて


「ふぇっ…」


「いお、なんでも話して?」


優しい声でそう言って優しく抱きしめてくれる暁斗くんの胸でしばらく泣いてしまった。