「期末テストの結果出たぞー」
旅行からあっという間で明後日から夏休み。
「阿部、去年から成績が下がってるぞ。受験ちゃんと考えてるか?」
ドキッ
正直今回手応えがなかった期末テスト。
受験か…
家を支えたいから高校卒業したら働くつもりだった。
だけど、どっちにしてもこの成績の下がり方はダメだ。
気が緩んでる?
家やバイトを言い訳にしてるよね?
学年順位が半分以下なんてヤバイ。
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「ただいま」
バイト前に荷物を置きに家に帰った。
「伊織、明後日の終業式のあと三者面談よね?」
ドキッ
そうだった、、、
この成績、お母さんに心配かけちゃうよな。
「行きたい大学は決まってるの?伊織の行きたいところを選びなさいよ」
そう言って優しく笑うお母さん。
荷物を置いて私はまた靴を履く。
「ありがとう、お母さん。でも、私就職するつもりだから」
「えっなに言って…」
「バイト、行ってきます」
急いで家を出た。
見ようとしていなかった現実。
別に将来の夢とかないし
夢があるとすれば、晴にやりたいことやらせてあげたいことぐらいかな
そのためにはやっぱり働かなきゃだし。
アルバイト先の近くにある大学の前を通る。
大学生のお姉さんを見て胸がキュッとなった。
憧れじゃないって言えば嘘になる。
「働こう」
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終業式の日。
三者面談。
「ご本人にも伝えましたが、成績が結構落ちていて受験に向けて本腰を入れないと危ないと思います。ちなみに、志望校は決まっていますか?」
「申し訳ありません。伊織は悪くないんです。私がアルバイトをたくさんさせたり家事をお願いしたり負担をかけ過ぎているんです」
ううん、違う。
「先生、私進学はせずに働こうと思ってます」
「伊織!?」
「阿部、それは本気なのか」
「はい。前から決めていました」
「いえ、先生。伊織には進学してもらいます!」
お母さんが必死に先生に言ってくれている。
「ご家族でよく話し合ってください」
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帰り道。
「お母さん、暑い中来てくれてありがとう」
「伊織…お母さんがそんな風に考えさせてしまってるのはわかってるんだけど、だけどあなたには進学してほしいの」
「…………」
以前の私なら、お母さんがこう言ってくれても笑いながら断われたのに。
今は躊躇ってしまう自分がいる。
欲深くなってる自分がいる。
なのに、成績落としてなにやってんだろ。
「大丈夫だよ。これは私の意思なの。特に目指したいこもないし、それなら働いて晴に色々させてあげたい」
「それはお母さんやお父さんがやることよ。お母さんも体調が良くなってきて、お仕事再開しようと思ってるから。お父さんもー…「お母さん!」
お母さんの言ってくれることはすごく嬉しくて有り難くて
「ありがとう。でも、私の気持ちは変わらないから」
今はこうしか言えない。
なに、この気持ち。
「バイト、行ってくるね!」
最近、暁斗くんにも会えてないからだ。
声聞けてないからだ。
パワーが出ないんだ。



