大嫌いな王子様 ー後編ー


え…暁兄が笑った。
なんか、子どもみたいな笑顔で…なんて言うのかな
こんな無邪気に笑う暁兄、久々に見た気がする。


「おまえら、ガキかよ」

いや、暁兄の笑顔の方が何倍も子どもっぽいけど。



「ラッキー。露天風呂貸切状態じゃん」

和希が嬉しそうに露天風呂にダイブした。
…ったく。他に誰もいねぇからいいけど。

雨も止んでくれてて、のんびり入れる露天風呂。


ここ最近のことが頭をよぎる。
いおをたくさん泣かせた。
まだくそジジイとのことは解決しきれてない。
またなにかしてくるかもしれない。

くそジジイ…

小さい時のことを思い出す。
自由がなくて、ただひたすら勉強。
学校が俺にとってせめてもの自由な時間だったけど、友達を作ると学校が終わってから遊べなくて余計に辛いから、自然と距離を作って人と関わらないようにしていっていた。


そんな俺が今こうして過ごしている。

俺、いいのか?こんな幸せで。


佐伯と目が合った。
「ん?どした?」

たまにはちゃんと伝えるか。

「ありがとな。おまえと友達になれてよかったなって思って」


・・・・・

少しの間、沈黙が続いた。
和希も珍しく黙っている。

え、俺変なこと言った!?
浮かれて調子乗ったか!?


「ばっ…バーカ!やっと気づいたか!」

顔を真っ赤にして言うから、なんか俺も照れてしまった。


「もう2度と言わねぇけど」

「なんで!?また言ってよ!!」


佐伯が俺に抱きついてくる。

「暁兄、佐伯ばっか相手にしてずるい!俺は〜」

「ブラコンは黙ってろよ!」

「は!?佐伯のくせに誰に言ってんだよ」


うるさいからふたりを無視して、露天風呂をひとりで楽しむことにした。


いおに出会うまではこんな今(せかい)、想像したこともなかった。
想像するだけ無縁で落ち込むだけだったから。


大切な仲間が増えていく。

キラキラして俺には眩しすぎて
このままでいいのかって不安になってしまう。

だからこそ、不安に負けないように強くならないとって思えるんだよな。


「のぼせるし、上がるぞ」

うるさいふたりを連れていく。


友達っていいな。


ーーーー

「ちょっとのぼせたから、外で涼んでくる〜」

和希が先に脱衣所から出ていった。
今なら皆実に少し話せるかな。


「なぁ、皆実」

「なに?」


皆実の風呂上がりの浴衣姿に鼻血が出そうな状態の俺。


「佐伯?鼻血出てるけど大丈夫か?のぼせたか?」

げっ!!出そうじゃなくて出てた!?

「ごめん!全然大丈夫!!」

俺は急いで鼻血を止めるよう試みる。


「で?なに?」


「いや、えっと…なんつーか…」


あれ?俺、なにをどう言いたかったんだっけ。

俺の気持ちっつーか…


「俺…皆実がマジ憧れの存在で、今こうして一緒にいれるのが夢のようで…」

そう、こんな関係になれるなんて。


「おまえは友達としてもちろん大事だしそれに…」


俺は…


「いおのこともよろしくな」


ドキッとした。


「皆実…おまえ……」

「いおのこと好きなのはわかってるよ。いおは気づいてないけど。でも、悪いけどアイツは俺のもんだから」


やっぱすげーな、皆実は。


「あっそ。わかってるし」


それでも、友達でいてくれるんだな。


「でも、、俺やっぱおまえのことの方が好きみたい」


俺にとっては精一杯の告白。
なに、こんなところで告ってんだって話だけど。



「それもわかってる。今年のチョコもうまかったよ」

ズルイ。
皆実はズルイ。


「おまえ、ホワイトデー返せよなぁ」

「それはいおにだけ」


やっぱり皆実が好き。



「まだ鼻血出てるけど」

「え"っっ!!!」