大嫌いな王子様 ー後編ー


梅雨で湿気がすごい。
だけど、そんなこと気にならないぐらい楽しい。


みんなで写真を撮ったり、名物を食べ歩きしたり、景色を見たり…


みんなへのお詫び旅行(暁斗くんが全て考えてくれて全てお金も出してくれている)のに、私すごい楽しんでしまってる!!


みんなを見る。


「佐伯、俺見切れてんじゃん。ちゃんと撮れよ」

「だから!なんで年上にタメ口なんだよ!」

みっちゃんや和希くんたちもみんな笑顔で、なんだかすごく嬉しくなる。

なにより暁斗くん。

暁斗くんの笑顔が嬉しくて、胸がキュッとなる。


パチッと目が合った。


「なーに見てんの?」

あ、意地悪な笑顔で近づいてきた。


「見てないもん」

恥ずかしくてフイッと目を逸らす。


「言わないと、ここでキスすんぞ」

「なっ…!!」

わざとだ!!
みんないるところで私が嫌がるのわかってて!!


「鬼、悪魔、キモ野郎」
「誰に向かって言ってんだ?」

ーーーーーーー

「あーあ、人の目気にせずイチャついてる」

弟くんが伊織と御曹司くんを見ながら言った。

「え…あれイチャつきになるかな?」

どう見ても罵声浴びせ合ってるけど。
まぁ、あれがふたりらしいか。

弟くんが少し寂しそうにふたりを見てる。
…ううん、伊織を見てる。
なんだろ、ちょっと胸がチクッとするのは。



「佐伯さん、悲しそうな顔で暁斗さんを見てるけど大丈夫?」

「な…!うるせぇよ金澤!」

「隠すことじゃないじゃない。てか、あなた今までオープンな行動してたし」

それは、伊織もいるところだけっていうか…!
伊織には俺の気持ち話してたから…


「もしかして佐伯くんって暁斗が好きなの!?」

「……あぁ」

理香ちゃんがど直球で聞いてきた。

今まで冗談っぽくしてきたけど、さすがに引かれるか。。


「一緒!私、伊織ちゃん好きだから!」

理香ちゃんの言う“一緒”の意味がすぐわかって、同じ考えの奴がいてなんだかホッとした。


「えー佐伯。暁兄が好きなの?」

あ、和希(コイツ)にはさすがに引かれるか?
自分の兄貴のことだしな。

「仕方ないなぁ〜。“叶わない恋”する者同士、仲良くしてあげる」

さすが兄弟。
上から目線っていうか、俺様なところがすげー似てる。

そして優しいところも。


「バーカ。こっちが仲良くしてやるよ」


ーーーーーーー

旅館のレストランで夜ご飯を食べて、温泉に向かった。


女子4人で温泉。
旅行も含めて全部が初体験で感激が止まらない。

みっちゃんと理香ちゃんはまだシャワーを浴びてて、私と優子ちゃんで先に温泉に浸かった。


「伊織さん、なに泣いてるの」

「だって…なんか幸せ過ぎて感動が…」

「鼻水が入るわ」

うん、そういうクールな優子ちゃんが好きです。


「私だって…楽しくて浮かれてるのよ。こんな風に人と関わるなんてなかったから」

あ、また優子ちゃんの顔が赤くなった。
照れてるんだ。

「出会った頃を思うと、懐かしいね」

「あなたが私から暁斗さんを奪った日ね」

「わ!そんな言い方…!」

「嘘に決まってるでしょ」


「なに話してるの〜」

理香ちゃんが先にやってきて、その後みっちゃんもやってきた。


「あとで近くのコンビニ行かない?夜の女子会のためにお菓子買おうよ」

みっちゃんの提案で、お風呂上がりにコンビニに行くことが決定した。


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男子湯


「皆実と温泉とか感動…」

「うるさい」

「佐伯〜俺とも嬉しいだろ?」

「え、全然」


和希や佐伯を見てて思わず笑ってしまった。