大嫌いな王子様 ー後編ー

「そいえば暁斗くん、今日は初めてのコンビニ出勤とは思えないぐらいすごかったね。セールのチキン、大量に売ってたし」

「利用できるもんは自分自身でも利用しようと思って」


清々しい!!!
そりゃ、それだけのお顔でしたらそうなるよね!!


「俺はいおを尊敬したよ。また知らない一面見れて嬉しかった」

私もそんな風に言ってもらえて嬉しい。

「それに違う職種を経験するのも大事だなと思った。どんな風に売られてるのか、接客や商品の配置とか、勉強になることが多かった」

さすが暁斗くん。
仕事脳になってる。


「あ!でも、さっきお客さんにチキン大量に売ろうとしたでしょ!?あれは強引と言うか、絶対やっちゃダメだよ!あのお兄さん、優しいからあんな感じで済んだけど普通はかなりキレられるよ!」
(キレられるで終わるのか?とも思う)


「普通のお客さんにはしねぇよ」

「普通のお客さんだったよ」

「自分の彼女に手出されてて黙ってる男の方がヤバイと思わねぇ?」

「…はい?」

言ってる意味がわからない。


「やっぱいおは、俺の見てねぇところで浮気すんだな」


はぁぁあ!?

「暁斗くん、なに言ってるの?浮気とかするわけないから」

「あんなデレデレしやがって」

「はい!?デレデレとかしてないし!そもそも私なんか相手にされるわけー…!」

グイッ!

お得意の顎クイをされる。


「その自覚なしが1番やべぇんだよ」

「なっ…!!」


こんな話してるのに、なにドキドキしちゃってるんだ私は…!!


「目を離すとすぐ浮気するね、伊織チャンは」

「だから違うって…!!」


「どうしたらいいんだろうな?見えるところに俺のモンって印つけまくったらいい?それとも、相手の男しばこっか?」


首を指でなぞられる。
体がビクッとした。


「俺を怒らせんなよ」

そう言って、スタスタと先に歩きだした暁斗くん。


なんなの、もう。
今日は色々あり過ぎて心が追いつかない。


暁斗くん
それはヤキモチ…だよね?
(ただヤキモチの妬き方がだんだんレベルアップしてるような気がするけど、今はまだスルーしておこう)



「なぁいお。遠回りして帰らねぇ?」

暁斗くんが手を出してくれた。

あ、優しくなってる。
情緒不安定か?なんて思ってしまうけど、それも黙っとこ。


「うん。私もそうしたい」


ひとまずは暁おじと無事決着が着いたってことで
もう少しだけ一緒にいてもいいよね?



「腹減ったー」

「ウチでよければなにか作るから食べていく?」

「マジで!ついでに泊まらせて」

「無理。帰って」



大好きな暁斗くんと離れずにすんだ日。
暁斗くんのコンビニ初勤務日にもなった。
私にとって、絶対忘れられない日の1日は中身が濃い1日になった。


手を繋いで歩きながら暁斗くんを見る。


ん?とこっちを見る暁斗くん。


この前のホテルで暁斗くんを探していた私を思い出す。


私も相当なヤキモチ妬きだよね。
暁斗くんのこと言えない。



「テメェ、俺の顔見て無言ってなんだ」

「なんでいきなりケンカ腰なの」


やっぱり情緒不安定だ、この人は。



「あ!チキン6個あるからそれ食べなよ。責任持って」

※無理矢理売ろうとしたチキンは暁斗くんが全部買いました。