大嫌いな王子様 ー後編ー


「お兄さん、何歳?私たちと近いかな?」

「秘密」

「教えてよー」

「じゃあ、このチキン買ってくれたら」

「買う買う!!だから教えてー!連絡先もー!」

「連絡先は無理」


すげー。。。
今セールしてるチキンまで売りまくってて、私は急いでチキンを追加で揚げていく。


夕方のピークでも、みんな暁斗くんの方に並んでなかなか私の方のレジへ来てくれない。

なんでやねんっ!!!



「47番のタバコ、3箱で」

「こんなに吸ってたら体悪くしますよ」

「きみ…なにか欲しい物とかある?」

「このチキン買ってください」

おっさんも手玉に取ってるんかいっ!!!



私は自分に自信をなくしながら、チキンを揚げていく。



ガシッ

「いーお。これ、どうやって処理すんの?」

暁斗くんが私の肩に後ろから手を回した。


「暁斗くん!仕事中だから!」

「だから、これ教えてよ」

なんという、マイペースな暁斗くん。


「収納代行だね。私するよ」



「いおってすごいな」

「へ!?」

収納代行の支払いも終わり、お客さんがひと段落した時にいきなり暁斗くんがこう言った。


「なにがすごいの!?」

「俺、全然知らないことばっかり」

「暁斗くんの仕事、私は全然わからないよ」


でも、正直暁斗くんと働けるのは夢のようで嬉しい。


「一緒に働けるってこんなに嬉しいんだね!まぁ、お客さんはみんな暁斗くんに夢中だけど」

私はレジから出て補充に向かおうとした。



ガシッ

腕を掴まれた。


「今、そんな可愛い顔で可愛いこと言うのずりー」


わわわ!!
そっちこそ今そんなこと言う!?


「仕事中!!」

「チッ…」

なんの舌打ちだよ!!


補充をしながらチラッと暁斗くんを見る。
いつも働いてる場所に暁斗くんがいる、なんだか不思議な感じ。


ウィーン

「あ、こんばんは!」

「いらっしゃいませ。お疲れ様です」

週に何度か来てくれる大学生のお兄さん。
お互いだんだん打ち解けて挨拶程度をするようになった。

「最近毎日入ってない?」

「あ、先週週6だったからかもです」

「働き過ぎだって」

優しくて、お兄さんが出来たような感覚。



「はい」

お兄さんの買ったものをレジに通していると、商品の中のひとつのペットボトルを渡された。


「週6お疲れ様ってことで。休憩とかで飲んでよ」

新発売の紅茶。


「えっでも悪いです!」

「いいからいいから♪」


いいのかな…?
でも嬉しい。


「ありがとうございます」



ドサドサッ

いきなり目の前に勢いよくなにかが落とされた。


「へ…?」

目の前には小袋に入ったチキンが6個。


「チキン6個追加っすね。ありがとうございます」

「え…あの俺頼んでないんですけど」

「頼んでましたよ?」

横から暁斗くんが乱入してきた。
チキン6個を持って。


「いや、暁斗くんチキンは頼まれてないんだけど…」

「は?頼んでましたよね?」

なに考えてんだ!?
頼んでないってば!!


何故か、戦闘モードの暁斗くん。
意味わかんない。


「あはは!きみ、面白いね。初めて見るけど新入りさん?」

「だったらなんすか?」

ギリ!
ほんとにギリギリのラインでなんとか敬語っぽいのを使ってるけど、総合的に考えて接客アウトだよね!?