〜〜〜〜〜!!!
なんだか、ドアの外が騒がしい。
バンッ!!
「いお!!」
え、、暁斗くん…?
「は…?くそジジイ、テメェ…!」
土下座をして泣いている私を見た暁斗くんは、今まで見たこともないような怖い顔をしてこっちにやってきた。
「わっ!」
後ろから肩に腕を回されて、後ろに来た暁斗くんにもたれ掛かる姿勢になった。
ぎゅっと後ろから抱きしめられる。
暁斗くんの体温を感じて、さっきまで真っ黒だった心が温かくなっていくのがわかった。
「ジジイ、いおにこんなことしやがって。絶対許さねぇからな」
「暁斗、口の利き方に気をつけるんじゃな。そもそもはおまえがこんな小娘に頭を抜かしているのが悪いんじゃろう?」
「テメェには関係ねぇんだよ。いおになに言った!?」
暁おじはため息を吐いた。
「暁斗…おまえは優秀だと思ってたんじゃがな。。小娘には父親の解雇か、学校など全部やめてこの街から出ていくかどちらかを聞いていた」
「は…?」
「どちらも嫌と言ってなぁ。でも、おまえといたいんじゃと。ここまで頭が悪い人間と喋るのは疲れるもんじゃな。皆実家に関わられたこと自体恥じゃ」
「…ジジイ…殺す」
「暁斗、今すぐ発言を訂正しないとどうやるかわかってるのか?」
「テメェこそ、今すぐいおへの発言を訂正して謝罪しろ。俺は本気だぞ」
暁斗くんが手をパキッと鳴らした。
「暁斗くん、私は大丈夫だから!」
「大丈夫なんかじゃない!許せねぇ…!俺はこんな家に未練なんか…!」
「失礼いたします」
暁斗くんの言葉を止めたのは飯田さんだった。
「お話し中に大変申し訳ございません」
「なんだ飯田、とっとと話せ」
「では大旦那様、大変恐縮ですが失礼いたします。女子高生にそのような発言は聞くに耐え難く、軽蔑に値いたします」
え、飯田さん今なんて・・・
「飯田、おまえっ…」
暁斗くんも驚いている。
「ほう、飯田。おまえも頭が悪かったのか。そんな奴は皆実家にはいらん。今すぐ辞めろ」
「ジジイ!なに言ってんだよ!!」
やだ!飯田さんが辞めちゃうなんて!!
私のせいだ!!
「かしこまりました。ですが、条件がございます。暁斗坊っちゃま、伊織様にどうか自由をお与えいただけませんでしょうか?」
「貴様がわしに条件か。片腹痛いわ」
「来年予定している事業について、私しか把握していないことがございます。こちらの内容が条件です」
暁おじが一瞬怯んだ。
「飯田、調子に乗るのもいい加減にしろ」
「本気です」
空気が凍っていくのがわかった。
「飯田、私を待つように言ったはずだが?」
ドアの近くに立っていたスーツを着た人たちが頭を下げた。
そして、暁おとが入ってきた。
「父さん…来てくれたのか」
暁斗くんがボソッと呟いた。
「申し訳ございません、旦那様。我慢出来ず…」
「まだまだ未熟だな」
暁おとがこっちに来る。
私のそばに来て、まさかのしゃがんだ。
「きみはいつも泣いているな」
頭をクシャッとされた。
「私たちのせいだな」
暁おとはそう言うとソファに座った。
「飯田、暁斗たちを部屋の外へ連れて行け」
「かしこまりました」
「えっと…お父さん!その…」
暁斗くんに連れて行かれながら暁おとを呼んだ。
暁おとはニコッと優しく笑って手を振った。
そして飯田さんによって、部屋のドアが閉められた。
もう頭の中がぐちゃぐちゃ。
今なにがどうなって暁斗くんがいるのか
暁おとがいるのか
でもそれ以上に暁おじに言われた言葉に支配されてる感覚で、心がぎゅっと苦しくなる。
「飯田、取ってる部屋は?」
「こちらでございます」
そう言って飯田さんはカードを暁斗くんに渡した。
「おまえはここにいて、父さんが出てきたら連絡しろ」
「かしこまりました」
暁斗くんに引っ張られてどこかへ向かう。
頭が追いつかない。
2520と書かれた部屋の前に着くと、さっきのカードを出してドアを開けた暁斗くん。
パタンッ
この部屋は…。
ぎゅうっ
暁斗くんが抱きしめてくれた。
「いお…ごめん。ほんとにごめんな。辛い思いさせて」
少しの間止まっていた涙が暁斗くんの温もりと言葉で、また溢れてきてしまった。
私は暁斗くんの胸に顔を埋めてなるべく泣いてるのがバレないようにした。



