大嫌いな王子様 ー後編ー

美味しいお料理とケーキをご馳走になって、今は暁斗くんの部屋。


「飯田や牧さんや料理長が、いおの誕生日祝いたいってずっと言っててさ。和希は言うまでもないけど」


そうだったんだ。

「嬉しくて幸せ過ぎる誕生日だよ。ほんとにありがとう」


ソファーに座ってる私に近づく暁斗くん。


「これで満足?」

「え?十分過ぎるよ。行きたい所をデートしてもらって、こうしてみんなにもお祝いしてもらえて…ヤバイ!!」


「まだ満足すんな」

え?


暁斗くんが私の首元を触る。


身体がピクッとなる。
同時に速く動き出す鼓動。


近づく暁斗くんの顔。

私はぎゅっと目を閉じた。




あれ?

キス…ではない?


そっと目を開けると、私を見てニターッと意地悪な顔で笑ってる暁斗くん。


「キスされると思った?」

ドキッ!!

「わっ!思うわけないじゃないじゃないですか!」

「いや、日本語変だし」


トンッと指で私の首元をまた触る。

私も自分で暁斗くんが触れた場所を触る。


「え……」


これ…ネックレス??


「改めて…誕生日おめでとう」

「あ、ありがとう……」


私は立ち上がって部屋にある鏡の前に行く。


すごく綺麗なネックレス。


「暁斗くん!こんな素敵な物…もらっていいの!?」


後ろからぎゅっと抱きしめられた。
鏡越しで目が合う。
それにまたドキドキしてしまう。


「当たり前だろ。それに…これは首輪だから」

「首輪?」

「俺以外の男(やつ)にフラフラ行かねぇように繋いどくんだよ」



今日の暁斗くんはいつもより9割増しでかっこよく見えて、私は気絶寸前。
こんな束縛強め発言をされても、ドキドキは止まらなくて嬉しくなってしまう。

これも病気なのでしょうか?


「じゃあ…ずっと繋いでてくれますか?」

自分の口からこんな言葉が出るのも意外で怖い。



「…あぁ、一生離さねぇから覚悟しとけよ」

そう言って優しいキスをくれた。


約束だよ?暁斗くん。




また宝物が増えた。

なんか…最終回並みに幸せで怖いんですが…
まだ最終回じゃないよね?



「あ!もうすぐ22時だ!帰らなきゃ!」

「泊まってけよ」

「帰ります」

「即答かよ」


暁斗くんが抱きしめてくれる。


「おばさんや晴に謝ってて?せっかくの誕生日、俺が独占しちゃったから」



(回想)

今朝

「行ってきます」

「伊織、お誕生日デート楽しんできてね♡」

「え!お母さんなんで知ってるの!?」

「暁斗さんが昨日来た時、大事な時間なのにすみません。でも、俺にいおの誕生日をくださいって言ってくれたのよ」


暁斗くん、そんなことを!!??


「お誕生日のお祝いは明日しましょうね」

「うん…ありがとう!楽しんでくるね」


(回想終了)



「うん、伝えておくね」

暁斗くんの優しさを噛み締める。
昨日のこと、私には言わないのが暁斗くんらしい。




ガチャッ!!

「伊織〜!暁兄とばっか一緒にいるのズルイよー!」


おわーっ!

急いで暁斗くんと離れる。


「和希…だからノックしろって…」

「俺の部屋に泊まったら?」


暁斗くんの話は完全無視の和希くん。


そんなやり取りを見ながら笑う幸せな時間。



私、17歳になりました。