大嫌いな王子様 ー後編ー

少しの沈黙が続く。


やってもーた・・・


「ほぉ…よく言ったな」


暁おじの表情が少し強張った。
怖くて手が震える。


「なら…望み通りきみ自身にわしを敵に回したことの恐怖を味わってもらおうかの」


心臓の鼓動が速くて息がしづらくなる。


「まずは学校が退学になるようすぐ手続きしよう。そうじゃな、他の高校にも編入出来ないように根回ししておこう。それに働いてるコンビニにもすぐ連絡を入れてクビにしてもらおうか」


なに言ってるの…この人


「というか、この街自体にいれないようにしよう。明日にはおれなくなるが良いか?」


人間じゃない、こんなこと言える人。



「…や……」

「なんじゃ?聞こえんぞ」


したかったらすれば!?って言いたいのに言えない。


「…や…めてくだ、さい…」


悔しい 悔しい 悔しい


「なら、暁斗と別れて皆実家に2度と関わるな」


ボロッと我慢していた涙がこぼれてしまった。

こんな奴の前で泣きたくなんかないのに。


「いや…です」

「きみは日本語がわかってるのか?なら、明日にはこの街から出て行ってもらう」


「どっちも…無理です」

わかってる。
むちゃむちゃなことを言ってるって

だけど、頑張って諦めずに伝え続ければ
ほんの少しでも伝わるんじゃないかって


「日本語が通じないような頭の悪い奴と暁斗が少しの期間でも一緒にいたのかと思うと吐き気がする」


でも、私の考えが甘過ぎたんだ。
通じるわけがなかったんだ。


「こんな頭の悪くて庶民以下の汚い人間なんかのどこがよかったんだ、暁斗は」


あぁ、私なんでここまで言われなきゃいけないんだろ。

ムカつく、悔しい

黒い気持ちが心を支配していく。



ザッ
私は床に土下座をした。



「先日の言葉は…心から謝罪します。申し訳ありませんでした」

ほんとは謝りたくなんかない。
こんな奴に。


「家族にはなにもしないでください。そして…」


それ以上に私には大事にしたい気持ちがあるってちゃんとわかったから


「暁斗くんと一緒にいさせてください」


そのためなら、いくらでも土下座でもなんでもしてやる。
そう思えるようになった。


「きみにはプライドというものがないようだな」


私は顔を上げた。

上から冷たい目で見下されている。
涙で視界が揺らぐけど、それだけはすぐわかった。


「これが私のプライドです」


暁斗くんと離れたくない。



「ふ…大したもんじゃ」

暁おじが少し笑った。
もしかして…少しは伝わったのかな?



「なら、あの窓から飛び降りれるか?それが出来るなら認めてやろう」


あ、私のバカ。
期待しても無駄だってわかってたはずなのに。

それでもまた期待して、傷つく。



「これ以上きみの顔を見ていると気分が悪くなる。わしの気持ちは変わらん。きみが暁斗から離れないなら、父親の解雇かきみがこの街から出ていくかどちらかじゃ」


心が痛い。

なんだろう…なにも考えられなくなる。



「今すぐにどちらか選べ。きみの弟や母親の人生を変えるのもわしにとっては一瞬なんじゃぞ」


もうダメだ。。。



ただ、一緒にいたかっただけなのに。

神様、どうしてダメなんですか?



「ふぇ…」

「うるさい。さっさと決めろ」


負けたくないのに…

「私は…」


弱くてごめんなさい、暁斗くん。