大嫌いな王子様 ー後編ー

「気になって…着替えました」


「…は?気になって着替えるってなんだよ」

うん、我ながらそれはないやろって思ってしまった。


後つけたなんて言ったら…引かれちゃうよね。

金澤さんたちの名前を出したら迷惑かけちゃうかもしれない。


「親切な人がいて着替えとメイクしてくれて…嬉しくてホテルの中散歩してました」


・・・・終了。


なんだ、このありえないほどの嘘は。
嘘というのも嘘に申し訳ないほど、クオリティが低過ぎる。


「…ぶはっもう無理。耐えれん」

へっ!?

そう言って暁斗くんが急に笑いだした。



「そっか。それなら仕方ないな」

え?
信じた??
あんな話を???


そんなバカな。


「じゃあ、こんな可愛いいおに偶然会えた俺はラッキーだな」


夢ですか、これは。
いきなりの甘々モードで思考が追いつかない。


「泣いてた理由、教えてよ」

私のほっぺに触れる手が温かくて、それだけでドキドキしてしまう。


「和希がなんかした?なら、今からしばいて再起不能にしてくる」

「え、物騒だからやめて」


てか、あなたが理由だし。


「和希くんじゃないもん…」


得意の顎クイをされた。


「言わないなら言うまでキスするぞ」

嫌だと言えない。
嫌じゃないから。

てかてか!私だって聞きたいことありすぎるし!!
理香さんとはどんな関係なのか
ここでなにしてたのか


「わ、私だって聞きたいこといっぱいあってー…!」

「黙って。やっぱキスしたい」


暁斗くんの顔が近づく。



ヴーッヴーッ

寸止めのところで止まり、キス未遂になった。



機嫌悪そうな顔をしながらスマホを見る暁斗くん。


「もしもし」

電話だ。


「あぁ、無事見つかったよ。心配かけて悪かったな」


見つかった?


相手、誰だろ。
理香さんかな。


「わかった。じゃあ、26階来てくれ。俺らもすぐ行く」

そう言って電話を切った暁斗くん。


「行くか」

「えっあの!誰からー…!」

理香さんのこととかまだ聞けてないことがいっぱい。


ちゅっ

唇が軽く触れ合う軽いキス。
不意打ちのキスにドキドキが急上昇。


「今はこれで我慢する」


この笑顔に騙されちゃいけない。
聞けてないことがまだあるんだから。
ドキドキよ、どっか行け!



ガチャッ

部屋のドアを開けて少し歩くとエレベーターホールに着いた。


「わり、待たせたな」

「遅いよ暁斗」


あ、、、“理香さん”だ。

さっきとは違うドキドキが襲いかかる。


エレベーターホールにあるソファに和希くんと理香さんが座っていた。


「…初めまして、伊織ちゃん」

えっ!いきなり話しかけられて焦ってしまう。


「あ、はい!初めまして!!阿部伊織と言います!!」

「いお、声でけぇよ。しかも名前呼んでたのに自己紹介かよ」

焦って大声で挨拶してしまった。
そして暁斗くんにツッコミまでさせてしまった。



「あはは!やっぱり思ってた通り面白い子だね伊織ちゃん♪」

「わぁ〜俺、なんか嫌な予感する〜」

和希くんが意味不明なことを言う。



ガシッ!!!


「可愛い!!私のタイプ♡」


は?????

理香さんにいきなり両手を握られて、意味がわからないことを言われた。



「ねぇねぇ暁斗なんかやめて私にしない?」

「え…あの…」

意味がわからなさすぎる。



「理香、調子乗んな。てか触んな」

暁斗くんが私の手を握ってた理香さんの手を払いのけた。


「マジキモイよ!ヤキモチ妬いてるじゃん」

「うっせぇよテメェ。黙らすぞ」

「ヤバ。おもろ過ぎる」


なんですか、目の前で起こってるこのやり取りは。
和希くんは暁斗くんと理香さんのやり取りを聞いてウケてるし。

意味わからなさ過ぎるけど、理香さん‥なんだか思ってたイメージと違う。。



ポーンッ

エレベーターが到着した。


「伊織!よかった無事見つかって」

「佐伯くん!金澤さん!」


そうだ!私、間違ってこの階に来て連絡もしてなかったんだ。


「あなた、何度も電話したのよ」

ハッ!!全然スマホ見てなかった。


「心配かけてごめんなさい」

あぁ、私迷惑かけてばかりだな。



「あの、暁斗くん実は…」

暁斗くんに金澤さんたちのこと話さなきゃ。
私に付き合ってくれたって。