「明日はバイト休みなのか」
「うん。今週土日も入らせてもらうから平日1日お休みもらったの」
「それでも週6だろ」
「毎日でもいいぐらいだから」
「バカか」
このアパート暮らしにも完全に慣れて、狭いけどお母さんや晴と一緒に過ごせるのが嬉しい。
「電話、おばさんたちに迷惑じゃねぇか?」
「大丈夫だよ。今日お父さん来てて3人で隣の部屋で話してるよ」
「そっか」
暁斗くんと電話する機会も増えてきた。
さっきバイトから帰ってきたらお父さんが来てて、みんなで夜ご飯を食べた。
少しずつ元の家族に戻れるように進んでいってるのかな、私たちも。。なんて思ったりもする。
お父さんの支えもあって、以前より生活もキツくなることはなく細々と暮らせている。
「あははは!!!」
「ん!?笑い声!?」
「ごめん…お父さんたちの笑い声大きくて……」
扉や壁が薄いから隣の部屋の声なんてすぐ聞こえちゃう。
「いいじゃん、楽しそうに笑ってんだし」
こういう暁斗くんがさらっと言ってくれるところ…好きだなぁ。
「暁斗くんは明日仕事?」
「あー…明日は人と会う」
「へぇ、誰と??」
別に、というか全然深い意味なく聞いた。
「まぁ…知り合いだよ」
「…ふーん」
なんだ、このなにか含めたような言い方は。。
「どこで会うの?」
気になってさらに突っ込んで聞いてしまう。
「決まってない」
ほんとか?
「へぇ〜」
まさか浮気とか
いや、それは暁斗くんに限って絶対ないと思うけど
でも
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次の日。
「わー!なんでみっちゃんお休みなのー!」
みっちゃんに相談したかったのに風邪でお休みだった。
私たちは無事高校3年生になり、みっちゃんとまた同じクラスになれた。
そんな矢先のこと。
何故か膨らむ不安。
あんな言い方するからだよ。
もっとスッと言えばよかったじゃんか。
前にみっちゃんに女の勘は当たるとかって聞いたことあるしな。。。
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「んで?なんで俺なわけ?」
「暁斗くんの様子を聞けるのは佐伯くんが1番だと思って」
「利用すんなよ」
あれから佐伯くんに連絡をして、放課後優聖学園の前で合流した。
「暁斗くんは委員会で遅くなるんだよね?」
「あぁ。あともう少しで出てくんじゃねぇ?」
物陰に隠れて暁斗くんを待つ。
「まぁ面白そうだから付き合うよ、尾行♪」
「いや!!尾行っていうか!ちょっと様子見るだけっていうか!!」
「ヤキモチかぁ〜ラブラブなことで」
「違うもん!!」
ギャーギャー騒いでると後ろから人の気配を感じた。
や、やばい!!
見つかった!?
そーっと振り向くと
「あなたたち、なにやってるの?」
「金澤さん!」
久しぶりに金澤さんに会えた。
「よぉ金澤。伊織が皆実の尾行するみたいでさ。面白そうだから付き合おっかなと思って」
「まぁ、悪趣味」
グサーッ!!
真顔で言われてだいぶダメージをくらった。
そんなことをしていると門のところに1台の黒い大きな車が停まった。
明らかにお金持ちそうな車。
そこから出てきたのはスーツを着た男性で、その男性が後ろのドアを開けるとすごく可愛い女の子が出てきた。
「おいっ皆実だぞ」
その可愛い女の子に見惚れていると校舎から暁斗くんがやってきた。
なんだか胸騒ぎがする。
「暁斗!」
聞き間違いなんかじゃない。
その可愛い女の子が暁斗くんの名前を呼んだ。
「理香。待たせたな」
そして暁斗くんが近づき女の子の名前を呼んだ。
「今来たとこ。暁斗、背伸びた?」
理香って子がそう言って、背伸びをして暁斗くんの頭をポンポンッと撫でた。
「お前が小せぇだけだろ」
あ、暁斗くんそんな風に笑うんだ…。
ヤバイ、これ以上見たくない。。
「くそー!俺の皆実に簡単に触りやがってー」
隣でぶつぶつ言ってる佐伯くんの頭を金澤さんが叩いてたけど、今はそれどころではない。
暁斗くんがその子の車に乗ってどこかへ向かった。
すると金澤さんがスマホで誰かに連絡をした。
「ちょっと今の車追いかけて」
「え?」
「なにウジウジしてるの?行くわよ」
私は金澤さんに手を引かれ一緒に金澤さんの車に乗った。
「ちょっとなんであなたまで来てるのよ」
「俺だって皆実が気になるよ」
「邪魔しないでよ」
佐伯くんも一緒に行くことになった。
暁斗くん、どこに行くんだろう。
たどり着いたのは明らかに高級そうなホテル。
「ふぇ〜…」
こんな所入れない。。。
金澤さんが私を見る。
「あなたのその格好じゃ無理ね。あ、格好の問題じゃないか」
グッサー!!!!
さっきから金澤さんの言葉がグサグサ刺さる。
一応お互い制服だけど…
優聖とウチの学校じゃレベルが違うよね。
「それぐらいわかってますよー!もう帰ります…」
よく考えたら後つけるとか…私なにやってんだろ。
「佐伯くん、金澤さんご迷惑おかけしました。ついてきてくれてありがとうございました」



