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あっという間にやってきた文化発表会当日。
衣装に着替える前に、教室でセリフなど出演者で確認中。
少しすると教室の外が賑やかになってきた。
なにかあったかな?
ガラッ
いきなり教室の扉が開いたためそっちを見ると、意味がわからない光景が目に入ってきた。
へ????
「御曹司くんじゃん」
私は言葉が出なくて、みっちゃんが呼んでくれた。
「あ〜伊織いたー」
暁斗くんの後ろからひょこっと顔を出した和希くん。
「きゃー!なんで暁斗様がいるのー!?」
「待って!一緒にいる子って弟さんの和希様!?和希様もカッコ良すぎるんだけど!!」
クラスの女子たちが騒ぎだした。
暁斗くんがなにも言わずズンズンこっちにやってくる。
「俺がコイツの代わりに出る」
「…は??」
暁斗くんがコイツと言って指をさしたのは長谷川くん。
「暁斗くん、なに言ってんの?」
私はまだ状況がイマイチ把握しきれていない。
でもとりあえず、おかしなことを言っている暁斗くんをなんとかしないといけない。
「俺が代わりに王子として出るって言ってんだよ」
「えー、暁兄ずるいって。俺が出たいー」
暁斗くんの突拍子もない発言にクラスの女子がきゃーっと黄色い声を出す。(和希くんについてはスルーでいいや)
「あのさ…そもそもなんでここにいるの?」
「…は?別に普通に案内されたけど」
前みたいにカネモチパワー使ったな。
「今日の劇、飯田さんと牧さんも見にきてるよ」
和希くんが教えてくれた。
それはすごく嬉しい。
だけど、それとこれとは別。
「暁斗くん、長谷川くんに謝って」
「あ?なんでだよ」
「みんなで今日まで頑張ってきたの。長谷川くんに失礼過ぎるよ。ちゃんと謝って」
教室内が静まり返る。
「いや俺、謝るとかいいからさ…」
長谷川くんが申し訳なさそうにぼそっと言った。
「ううん、よくないよ」
いくら暁斗くんでも、これは許せない。
「…バカバカしい」
暁斗くんはそう言って和希くんをつれて教室を出ていった。
「長谷川くん…ほんとにごめんね。嫌な気持ちにさせて」
私はほかのクラスメイトたちにも頭を下げた。
「なんで阿部さんが謝るんだよ。マジ気にしないで。皆実っておもしれー奴だなって思っちゃった」
「へ!?どこが!?」
「んー気が向いたら話すわ♪それに阿部さんはやっぱりいい人だね。皆実があんなけ好きになるわけだわ」
長谷川くんの言っている意味がわからない。
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「御曹司くん!」
私は御曹司くんたちを追いかけた。
「あれーみっちゃんじゃん」
相変わらず呑気な弟くん。
「伊織の言いたいこと、わかってるよね?」
「…あぁ」
「ならよかった」
私は教室に戻ろうと後ろに向いた。
「なんつーか…!」
御曹司くんの声が聞こえて急いで振り向く。
なにか言いたげな様子。
「悪かったよ…俺って情けねーな」
わぁ。
こんな顔もするんだ。
御曹司くんの知らない一面が見れた気がした。
「それ、ちゃんと伊織に言いなよ」
伊織と御曹司くんが心配になって追いかけてきたけど、いらぬ心配だったね。
「みっちゃ〜ん!」
教室に戻ろうと走りだしたら今度は後ろから弟くんの声が。
「みっちゃんはやっぱりいい子だね」
そう言ってニコッと笑って手を振る弟くん。
不覚にもその笑顔にドキッとしてしまった。
「いまさら気づいたの?」
強がりながらその場をあとにした。
改めて、あのふたりと一緒にいて普通な伊織を尊敬した。(いや、あの子も変態妄想してる時結構あるな)



