大嫌いな王子様 ー後編ー


「みっちゃん、明けましておめでとう〜!会いたかったよー!」

「あけおめ♪お正月の話、たんまりと聞かせてもらおうじゃん」


あれからあっという間に日は経ち、3学期が始まった。
ちなみにアンディーさんは次の日の朝、アメリカに戻った。
連絡先を交換してくれて、いつでも相談してねって。
お姉さんが出来たようですごく嬉しい。




「では今年の出し物はシンデレラにしたいと思います」


ふぇっ!?

ボーッとしていたホームルーム。
学級委員の子が前で来月ある文化発表会の出し物について説明してくれていた。
私はというと、ただボーッとしてる始末。


うちの学校では何故か2年生だけこの時期に文化発表会というものがあり、クラスみんなでなにかを作り上げ発表する。

うちのクラスは劇になったようだ。
まぁ、私は裏方だな。


「主役のシンデレラは公平にくじで決めたいと思います」

くじ運がない私はホッとしながら前に出てくじを引く。



「おめでとうございます!阿部さんがシンデレラに決定しました!!」

クラスみんなから拍手。


「はいっ!!??」

「伊織やったじゃん!!」


いや、くじ運悪過ぎて違う意味で当たってしまった。。




「みっちゃん〜!!私なんかがシンデレラとか絶対おかしいよー!!」

「頑張んな。王子役長谷川じゃん」


長谷川くんって


「阿部さん〜!!一緒に頑張ろうなぁー!!」


野外遠足で同じ班だった人!!



「もしかして、これって運命なんじゃないかな?」

「は!?」

「俺たちふたりがくっつく運命ってこと」


私は返事するのが面倒くさくなり、長谷川くんを無視した。



「みっちゃんは台本作るんだっけ?日にち少ないし大変だね」

「まぁねー。でも長谷川とラブラブシーン、たくさん作ってあげるからね♪」

「意地悪やめてよー!!」


明日の放課後から早速準備などが始まって、台本が出来次第練習に入るらしい。



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「お疲れ様でした〜」

今日のバイトも無事終了。


コンビニを出ると飯田さんがいた。


「飯田さん、いつもすみません。私ほんとにひとりで帰れますよ」

「お疲れ様でした。とんでもございません。暁斗坊っちゃまからもですが、旦那様も和希坊っちゃまもお迎えを心配してらっしゃいますよ」


暁おとまで。。
迷惑かけちゃってるけど、なんだか嬉しい。


今のところ、暁おじ(お祖父さんのことをこう呼ぶことにした)から何かされたとかはない。



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あれから1週間。
みっちゃん作の台本がほぼ出来上がり、練習が始まった。


私なんかが主役でいいのか!?って思いが半端ないけど、なんとか頑張ってみる。


「長谷川!もっと王子様らしく!」

「伊織!照れない!声小さい!」


え、みっちゃんめっちゃ怖いやん。
激こわ監督に変貌している。




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帰る準備をしていると長谷川くんがやってきた。

「阿部さん、もしよかったら帰り道セリフの練習しない?俺、まだ自信ないとこばっかで」


長谷川くん、意外と真面目なんだな。←失礼
私も見習わなきゃだな。



「うん。ぜひ!!」


みっちゃんは他の子たちと台本について打ち合わせがあるようなので、私は長谷川くんとふたりで帰ることにした。


「阿部さん、今日はバイト?」

「うん。劇の練習があるから少し遅めの出勤にしてもらったの」

「そっか。バイト頑張っててすごいね」

「そんなことないよ、私なんか全然」


私はもっともっとすごい人を知ってる。
人のために頑張れる人を。

あ…暁斗くんに会いたくなってきた。



「じゃ、練習しよっか」

「うん」


長谷川くんと帰りながらセリフの練習を始めた。