大嫌いな王子様 ー後編ー

「なぁ、どこ行きたい?」

「え、今からの?」

「そ。今日はいおの行きたい所に連れてってやる」


私の行きたい所かぁ。


「まぁちなみに…クルージングディナーとかプライベートジェット飛ばすとか色々考えたんだけど……なんかどれも違うだろ?」


「うん。全然違う」
私は即答した。


天然のお金持ち発言。
でも、色々考えてくれたのは素直に嬉しいな。


「どこでも付き合ってくれる?」

「いいぜ。いっそ外国でも」

「ひとりで行って」




私がお願いしたのは…



「ボウリング?」


そう、人生初のボウリング!!

駅の近くにあるボウリング場へやってきた。
実は来るのが憧れでもあり…ましてやデートで来れるなんて…!


「暁斗くんはボウリング、来たことある?」

「…ねぇ」


「じゃあまた“記念日”が増えたね!」

さらに嬉しくてワクワクが止まらない。



「そんな可愛い顔で笑うな。他の奴らに見られたくない」

「んなっ!!!!」


甘い、甘いぞ…!!
甘過ぎてもはや怖いぞ…!!


「そ、それ。そういうキモイ顔してろ」


2秒前に戻りたい。
そして殴りたい。


店員さんに説明してもらって、いざレーンへ!

ボールを選んで準備をしていると、ずっとスマホを触っている暁斗くん。

楽しくないのかな?



「暁斗くん…もしかして嫌だったんじゃ…」
「よしわかった!」


はい?

しばらくスマホを見てたのに、急に見なくなった。


「いおから投げろよ」

「う、うん!」


ボール…重いな。
ちゃんと投げれるかな。

ストライクを目指して真ん中に投げる!

…のつもりが投げた瞬間右に曲がり、おもいっきりガーター。


「初めてなんだしそんなもんだろ」

「次暁斗くんだよ」


暁斗くんがボールを構える。
それだけで絵になるこの人は、やっぱ只者じゃない。
フォームもなんかプロみたいに見えるけど!?
初めてなんだよね?


暁斗くんが投げたボールは綺麗にど真ん中真っ直ぐに転がり続け、見事ストライク。


「えーー!!!暁斗くん!!すご過ぎるよー!!」

私は驚きで大声+暁斗くんにハイタッチ。


「いお…声でかい」

ハッと我にかえり周りを見ると、ジーッと見られてる。
周りの皆さんにすみませんと会釈する。


「暁斗くんってなんでも出来るんだね!」

「いーや。これ見て真似しただけ」

そう言ってスマホを出し、動画を見せてくれた。
その動画はボウリングのコツをまとめたもので、さっき見ていたのはこれだったようだ。


「お互い初めてだし、少しでも俺がわかればいおに教えられるかなと思って」

うぅ〜、ぎゅってしたくなる。
変な誤解してごめんなさい。


「ありがとう!すぐ真似出来るなんて、暁斗くんはやっぱりすごいね!」



「じゃ、このあと3回連続でストライク取れたらご褒美くれよな?」

ご、ご褒美!?
意地悪な顔してる…


「私であげれる物なら…って!今日は私の誕生日だよ!」

「あはは!わかってんよ。いおの反応が面白くて」



もう…悔しいぐらい暁斗くんが好き。