「で?なんであんなケンカになるわけ?」
今、私の部屋(以前住んでいた時の)にアンディーさんがいる。
お互いお風呂も上がってあとは寝るのみ。
時間も遅くなり、お母さんに連絡して暁斗くんの家に泊まらせてもらうことになった。
でも、肝心の暁斗くんとは、、、
なんかよくわからないケンカ状態。
「わからないんです…。急に機嫌悪いなと思ったらあんな感じで。私も言い過ぎたけど…」
だって、急に口だけって
「“一生一緒にいる覚悟もないくせに”って言われて。腹たっちゃって…」
なんであんなこと言ったの?
これからも一緒にいたいって、そばにいたいって伝えてるのに。
暁斗くんがわからない。
「あー…なるほどね。やっぱりそっか」
アンディーさんはなにかをわかったように小さく頷いた。
「ごめんねイオリ。私が余計なことを言ったばかりに」
「え??なんでアンディーさんが謝るんですか!?」
コンコンッ・・・
「失礼いたします。お飲み物をお持ちしました」
「わぁ!!ありがとうございます!!」
飯田さんがわざわざ飲み物を部屋まで持ってきてくれた。
「それではごゆっくり…」
「飯田さん!!」
私は部屋を出ようとした飯田さんを引き止めた。
「あの…暁斗くんはその……体調は大丈夫ですか?」
飯田さんは少しの間のあと優しく微笑んで
「もうお部屋で休まれておいでです。大丈夫ですよ」
そう言って部屋をあとにした。
よかった。
発作を起こしたあとだし、まだ心配だったから。
「ねぇイオリ。アキって結構重たい男ねぇ」
「へっ!?」
重たい!?
ま、まぁその、、、
「そ、束縛?が強めだなって思う時もあるんですが…」
「あ、やっぱり?」
さすがのアンディーさん、暁斗くんの性格をわかってるんだなぁ。
「でも!!ビックリするぐらい塩の時もあるんです!!放置プレイ?っていうか、そりゃあもう、なかなかの塩加減なんです!!」
私が興奮して話していると、アンディーさんはポカンとこちらを見ていた。
「アキが塩…?え、アキが食べ物なの??」
あ、そっか。。
アンディーさん、外国にいるから例えがわかりにくかったかな。
「要するに、【冷たい悪魔なキモ野郎】に変身するんです。さっきみたいに。もう、なにが暁斗くんかわかんなくなりますよね!」
「あははは!!」
急にアンディーさんが笑いだした。
「な、なんですか!?」
私、面白いことなんて言ってないよね!?
「アキがそれだけあなたに“素”を見せてるってことでしょ?結局惚気ね」
「惚気てなんか…!」
「私の今まで知ってたアキは、今と変わらず口は悪いし仕事においては本当天才的で強気な性格だったわ。でもね…あんな風に優しく笑ったり誰かを気にかけるなんて、見たことなかった」
そう…なんだ。。
「イオリがアキを変えたんでしょ?すごいことじゃない」
アンディーさんが言ってくれる言葉ひとつひとつがすごく嬉しい。
「そんなクールなアキがあんな風に怒るなんてね。ねぇイオリ、アキはあなたとの将来を真剣に考えてると思うの。イオリは?」
将来……
「私も…これからもずっと暁斗くんといたいって思ってます。そばにいたいんです」
「でも、それは結婚とイコールじゃないのね?」
ドキンッ
また出た“結婚”という言葉。
「それは…」
結婚したくないとかじゃない。



