「いお」
急に真剣な顔になってこっちを見る暁斗くん。
「ありがとう」
え・・・??
「いおのおかげで父さんときちんと話せた。内容は…もういおの方が知ってるよな。父さんの気持ちも母さんのことも、全部わかったから」
暁斗くんの柔らかな表情。
胸がきゅーってなる。
「でも父さんらしくって、暁兄は仕事について釘刺されてたよなぁ。手抜いたらグループから追い出すって」
「うるせぇよ。俺は仕事では父さん一応尊敬してんだ。手ぇなんか抜くか。それよりお前勉強しないと、家を追い出されんだろ」
「口だけだよ」
「あの親父はマジでするぞ」
「くすくす…」
ふたりのやり取りを聞いて思わず笑ってしまった。
「いお!なに笑ってんだよ」
照れてるのか、顔が赤い暁斗くん。
「私のおかげとかじゃないけど、みんなちゃんと話せてよかった。すごく嬉しい!!」
私は暁斗くんと和希くんの手を握った。
「もう、ひとりで抱え込むのは無しだよ。約束ね」
スッと手を離そうとしたら、ふたりから逆にぎゅっと手を握られた。
「!?」
「それはいおもだぞ」
「え?」
「去年、いおがここを出た理由」
ドクンッ
「俺らがなにも知らないと思ってた?すぐくそ親父のせいだってわかったよね、暁兄」
「あぁ」
わかってたんだ…
「でも…じゃあどうして言わなかったの?」
暁斗くんと和希くんが優しく笑った。
「いおが話さないって俺らのためだから。前まではそれでも…無理矢理にでも聞こうとしたけど、俺らは俺らでいおをまたここに帰ってこれるようにしようって思ったんだ」
あ、泣きそう。
「そういえばあのくそ親父、この話はさっきしなかったよな。暁兄、あとで聞いてよ。伊織追い出したことキレたい」
和希くん、さっきから暁おとのことまだ【くそ親父】って言ってる。
「もういいんだよ。それも父さんなりの考えだったってわかったし」
「なんだよー。ちぇー」
頑張れる。
「ありがとう!!お祖父さんにも認めてもらえるように頑張るね」
暁斗くんが私に近づく。
「なんで笑えんの…?なんでいおがお礼言うの?ジジイのことも俺が迷惑かけて、嫌な思いさせてんのに」
少し不安そうな暁斗くんの顔。
「なにが迷惑なの??私が暁斗くんと一緒にいたいから認めてもらいたいんだよ」
暁斗くんが抱きしめてくれた。
「わわわ!!和希くんいるから!!!」
「無理。好き」
バリッ
和希くんに離された。
「調子乗んなよ暁兄。伊織のこと、俺はまだ諦めてないんだからな」
「あ?いおは俺のもんだよ」
「伊織は物じゃねぇよ!」
あぁ。
また、非現実的なケンカが目の前で勃発している・・・。
クラクラしてきた。
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「部屋の中、賑やかねぇ」
「アンディー様、貴重なお時間を作ってくださりありがとうございます」
「飯田も手が焼けるでしょ?あの子たちの面倒は」
「とんでもございません。ただ…」
「ただ…?」
「坊っちゃまたちの笑顔を守りたいという想いが増えたのは確かです。今まではなかなか見れなかった笑顔を伊織様が来られてから…たくさん見れるようになりました」
飯田も素直じゃないなぁ。
「あなたは最高の執事、そして秘書ね」
「それはお褒めいただいているということでよろしいでしょうか?」
「当たり前でしょ」
さぁ、この部屋の中でわちゃわちゃしてるあの子たちを守れる方法を考えなきゃ。
バタンッ!
「いつまで騒いでんの!?」



