ウィーン
♪〜
バイト先のコンビニの自動ドアが開く音がした。
「いらっしゃいませー…ってえっ!?」
「えって‥誰に向かって言っているんだ」
「だって…!!なんでここにいるんですか!?」
「きみがいなかったからだろう」
そう、かれこれ2時間弱前…
(回想)
暁斗くんたち、ちゃんと話せてるかなぁ。
ふとスマホの時刻を見た。
「え!!!???」
「いかがなさいましたか、伊織様」
スマホの画面には12:23と出ていた。
「ヤバイです!!私13時からバイトなんです!!」
元旦でさらに人がいないため、いつもの夕方より早めのお昼から入らせてもらうことになっていた。
「そうなのですか!?お仕事前に大変申し訳ございません!お送りいたします!」
私は準備をする飯田さんを止めた。
「大丈夫です、まだ間に合いますから。暁斗くんたちのそばにいてあげてください」
「伊織様…」
(回想終了)
元旦の朝、暁おとと話をした私は暁斗くんと和希くんと暁おと3人で話し合ってほしいとお願いした。
ほんとは話が終わるまでいたかったけど、バイトがあるのを忘れていて今に至るというわけで。。。
「申し訳ありません。バイトがあったので」
「元旦まで働くのか」
「稼ぎたいですし。それに…暁斗くんやお父さんも働いてますよね。みんな一緒です」
「…ふん、なんで笑ってられるのかわからんな、きみは」
えぇ!!
ただニコッと笑ってみただけなのに。。
しゅんとしていると
「ははは。やはりきみはわからん」
また暁おとが笑った。
あれだけ塩(いや、塩以上だな)だった暁おとがこんなに笑うなんて。
後ろから秘書らしき人がやってきた。
「あぁ、わかっている」
話が終わるとこっちに向き直った。
「ここで売っている物、全て私が買おう」
「はいっ!!??」
急なお金持ち発言。
何を言い出すんだ、この人は。
「売り上げが上がればきみの給料も上がるんじゃないのか?」
「そんな歩合制とかじゃないですから!!」
どこからそんな発想が!?
てか、お店の物急になくなったら営業出来ないし!
「あははは!!」
「なにがおかしいんだ」
「いえ、すみません。暁斗くんと同じこと仰ってるなぁと思って。さすが親子ですね」
クリスマスケーキの時、暁斗くんも全部買おうとしてくれてた。
そう言うと、暁おとが少し照れたような表情をした気がするけど気のせいかな??
無言でくるっと後ろを向き、お店の奥へと進んでいきなにかを持ってレジに戻ってきた。
手に持ってたのはペットボトルのレモンティー。
へぇ、暁おとレモンティー好きなんだ。
ブラックカードが出てきて手が震えたけど、なんとか無事にお会計を終えることが出来た。(小銭出してください)
「休憩とかで飲みなさい」
「え…いいんですか?」
私に買ってくれたんだ。
「ありがとうございます」
すごく嬉しい。
「父さん…きみから見ると祖父さんだな、さっき飛行機でアメリカに向かったと連絡があった。私も様子を見ておく。ひとまず安心しなさい」
あ…この話をしにわざわざ来てくれたんだ。
「ご迷惑を…おかけします」
「迷惑?きみは勘違いをしている」
「えっ?」
下げてた頭を上げると、こっちを見て優しく微笑む暁おとの顔が見えた。
「暁斗たちと何年ぶりかわからないぐらい楽しい時間を過ごせたよ。感謝している」
そう言ってヒラヒラと手を振りながらお店を出て行った。
私はその言葉に嬉しくて泣きそうになって俯く。
今、お客さんいなくてよかった。



