「伊織、誕生日おめでとう!」
「みっちゃん、ありがとうー!」
学校でみっちゃんがお祝いしてくれた。
「御曹司くんと仲直りできたみたいでよかったね」
「うん。まだ肝心なことは全然話せてないんだけどね」
不思議と暁斗くんからも深く聞いてこない。
正直もっと聞かれると思ってた。
「まぁ今日は色んなこと忘れて、デートを楽しみな?」
そうだよね。
今日は暁おとのことは忘れよう。
「楽しんでくるね!」
早く放課後にならないかなぁ。
キーンコーン…
終礼が終わった。
「みっちゃん、また明日ね!」
今までにないほどのダッシュで校門へ向かう。
あれ…
暁斗くん、いない。
って!!
暁斗くん、まだ学校終わってないかもだし!
私ってば浮かれて自己中に考え過ぎ!
「伊織〜♪」
「和希くん!?」
「よかったー!会えたー!!」
和希くんが私に抱きついた。
なんで和希くんがここに!?
優聖の制服ってだけで目立つのに和希くんだから、余計に注目の的。
「会いたかったよー!!」
和希くんも変わらず元気そうでホッとした。
「なにも話さずごめんね…」
「そんなん気にしなくていいよ。それより、お誕生日おめでと♪」
「それを言いに来てくれたの…?」
「うん!このまま暁兄放っておいて、俺とデートしようよ」
はい!?
わざわざ言いに来てくれたのはすっごく嬉しいけど
「和希くんごめんね!今から暁斗くんと出かけるから」
「暁兄はいいの!俺と行こ?」
そ、そんな可愛い顔でお願いされても…
「ダメです。あっじゃあ3人で出かける?」
せっかくここまで来てくれたし帰しちゃうのも申し訳ない。
「暁兄いるの嫌だけど、伊織と遊べるならいっか」
そう言ってまた私に抱きついた。
ガシッ
和希くんの頭が誰かに掴まれた。
そしてそのまま私から剥がされる。
「テメェ…なにしてんだ?しばかれてぇのか?」
「暁斗くん!!」
「暁兄だけズルいよ!俺だって伊織におめでとうって言いたかったんだから!」
「それで抱きつくのは意味わかんねぇよ」
ざわざわー…
気づけば門の周りはすごい人。
暁斗くんと和希くんのセットで女子からは黄色い声がたくさん。
このふたりに私みたいなのが混ざってるのも、ある意味注目の的のようだ。
「飯田」
ぬっと後ろから飯田さんが登場した。
「伊織様、こんにちは」
「飯田さん!こんにちは!」
ほんとまだ2日とかしか経ってないのに、みんなに会えるのがこんなに嬉しいなんて。
「和希坊っちゃま、本日は家庭教師の日ですよ。帰りましょう」
「嫌だ!今日は休む!」
「バカは勉強してろ」
問答無用で車に乗せられた和希くん。
そのまま、連れて帰られた。
「お前油断し過ぎ」
「油断?なにが?」
なんだか暁斗くんはご機嫌ななめの様子。
私は手首を掴まれて、暁斗くんのそばに引き寄せられる。
か、顔が近い…!!
ドキドキがうるさくなる。
「わかんねぇなら…今ここでキスするか?」
はい!?
こんなみんながいる所で!?
「バカ!するわけないでしょ!」
「さっき和希にはみんなの前で抱きしめられてたじゃねぇか」
まさか・・・
「和希は平気で俺は無理なんだ?」
ヤキモチ…?
うん、これはヤキモチだよね。
なんだか一気に嬉しくなる。
「なにニタニタ笑ってんだ。気色悪りぃ顔すんな」
私、仮にも今日誕生日ですよね?
誕生日当日に、彼氏に気色悪いって言われる彼女は世の中にどれぐらいいるんだろう。
スンッ…
さっきまでの喜びはどこへやら
一気に冷めた。
「ったく…行くぞ」
そう言って手を出した。
私はその手に自分の手を乗せる。
ぎゅっと繋がれた手。
「いおの手、あったけー」
破壊力抜群の笑顔。
あんな風に言ったそばからこうしてまたドキドキさせるんだから、この人は。
「早死にしたら暁斗くんのせいだからね」
「誕生日当日になに縁起でもねぇこと言ってんだ?」
あなた、さっき誕生日当日の私に気色悪いって言ってましたよ?
…なんて、言えるわけない。



