大嫌いな王子様 ー後編ー

キスの直前、私はまた大声を出した。


「…テメェ、さっきからなんなんだよ」

そのせいで暁斗くんの怒りを買ってしまった。
甘々モード終了。


私は急いで部屋の時計を見る。


1:12


なんと!!


「年、明けてるじゃんかー!!」

「あ?んなことかよ。うっせぇよさっきから」


そんなこと!!??

「大事なことだよ!」

「うるさい」

「わっ!」

暁斗くんが私を自分のひざに乗せた。


「今こうして一緒にいることが1番大事なんだよ」

もう…この人は……


なんでこんなに愛しくなることばっかり言うの?

言って欲しい時に言わないことも多いけど…
最近気持ちを言葉にしてくれることが増えたなぁって思う。


「うん…でもね、やっぱり年明けは大事だよ」

「お前そんなに年明けに重きを置いてたのか」


あ、なんか勘違いしてそう。


「もう、暁斗くんのバカ」

「あ?なんだと?」


私は暁斗くんのほっぺにちゅっとキスをした。


「明けましておめでとう。そして…付き合って1年だね!たくさんありがとう!これからもよろしくね」


これがどうしても言いたかった。
ほんとはメッセージで送るつもりだったけど、こうして直接言えて嬉しい。



「…あー……」

暁斗くんが自分の頭をガシガシと掻く。



「先越された…俺だってちゃんと覚えてるよ」


ドキッ…

「えへへ。嬉しいー」



すりー…

私のほっぺに触れる暁斗くんの手。


「そんな可愛い笑顔ずりー。俺、今どんなけ我慢してるかわかってんの?」

「へ!?」

一気に自分の顔が赤くなるのがわかった。




ドサッ


あれ???

気づけば私はベッドに倒れてて、暁斗くんが上にいる状態。


鼓動が一気に速くなる。



「記念日だしな。…たくさんキスしていい?」


ズルイ…。私が嫌って言うわけないのわかってるくせに。


「してください」


「仕方ねぇなぁ…」


そう言って甘いキスをたくさんしてくれる。


「ふ…あき……と…く…」

うまく息ができないほど。



「いお…大好きだよ。これからも…一緒にいような」


私はポーッとする頭でコクッ頷く。


「言って」

「ふぇ…?なにを…??」

たくさんの甘いキスで思考回路はほぼ停止状態。



「俺のこと、好き?」

わわわ!!!


「な、なに言ってんの!?」

いまさら!?

だけど、そう聞く暁斗くんの顔が可愛くて、でもどこか不安そうで胸がぎゅーっとなる。



「いおの気持ち聞いてんの」

「そんなの…わかってるでしょ」

「わかんねぇから聞いてんだよ」


絶対うそだ。

俺様な暁斗くんは、実は束縛も強めな少し不安がりなところもある人だと色々わかってきた。

それなのに、ビビるぐらい塩な時もあって情緒不安定か!?って疑ってしまうぐらい。


「お前…今しょうもないこと考えてんだろ」


さすがするどい!


「そんなことないもん」

「あっそ。言わねぇんならもういいわ」


わー!!

「言います!!言わせてください!!」



ニッと意地悪に笑う顔。
「なら、早く言えよ」

やっぱり俺様。



「好きだよ。だーい好きだもん」


私の髪を撫でてまたキスをしてくれる。


「もっと言って」

「すき…んっ」

言いたいのに言葉を遮るように深いキスをする暁斗くん。



ビクッ

「ん…!!」

暁斗くんのキスが首筋に移って、腰から手が服の中に入ってきた。



はっ!!
私、今信じられないぐらいボロボロの下着!!
(普段も大概だが)


「暁斗くん、待って…!」

「待たない」

「えっと…私変な下着…んっ」

またキス。


そして、私を見てふっと笑う。


「そんなのなんも気にしねぇよ。下着が気になるって、このまま続けていいんだ?」


ドキッ!!

「わ!そんなつもりじゃ…!」


暁斗くんが下着越しに私の胸に触れる。


「ひゃっ…」


そして私の胸にキスをした。


「やぁ……」

自分でも信じられないような声が出て、思わず口を塞ぐ。


「やべぇ…いお、可愛すぎ」

胸に甘くて鈍い痛みが走る。

暁斗くんのキスをする音を聞くだけで身体がゾクっとする。

なに…この感覚……


「ねぇいお。キスさせて?」

私は口を押さえながら首を横に振る。



カリッ
暁斗くんが私の耳を甘く噛んだ。

身体がビクンッとなる。

「いお、やっぱ耳弱いね」

その言葉にも身体はゾクッとして、さらにドキドキが増していく。


「ねぇキスさせて。いおとキスしたい」

暁斗くんの甘い言葉に抗えず、従ってしまう。

私は口元から手を離した。



「いい子」

そう言って約束通りキスをくれる暁斗くん。


「いお、怖かったり嫌だったらちゃんと言って?これ以上はやめるから」


この時の私はおかしかったんだ。


「…いや…じゃないよ」

大好きな暁斗くんの体温をもっと感じたいって思ってしまったんだ。


暁斗くんは少し驚いた顔をした後、私を抱きしめてくれて
「すげー好き。…愛してる」

そう言ってくれた。


私は嬉しすぎて涙が出てくる。


「なんで泣くんだよ!?」

「だって…嬉しすぎて…」

「…いお……そんな可愛すぎたらマジで俺止まんねぇよ……」


そう言ってキスをしながら、私の胸に触れる。
暁斗くんの手が動くたび私はビクッとなり、声が出てしまう。


「もっと聞かせて」

「あ…や……」


暁斗くんの手が私のスウェットのズボンをずらし始めた。


ドキンッ!!


少しずらされたズボン。
そして太ももに触れる暁斗くんの手。


ヤバイ…もう頭がボーッとしてなにも考えられない。




ドタドタドタドター…!!


ん・・・?
なにやら廊下からものすごい音が聞こえてくる。
そして近づいてくる。



「やべっ!」

暁斗くんの声にハッとして、私も全てを察した。



バンッ!!!

「伊織!暁兄!年明けだよートランプしようよー!!」


やっぱり!!


ノックなしで入ってきた和希くん。


私たちは急いで離れて、私は服を弾丸で整えた。


「和希…テメェマジで殺す」

「年明けから物騒だよー」

「うるせぇ!お前しばらく俺の部屋来んの禁止!」

「なんでだよ!?じゃあ、伊織と部屋戻っていい?」

「やっぱり殺す」


ふたりのやり取りを聞いて、心がほんわかして笑っちゃう。

さっきドキドキしてヤバかったけど、嫌じゃなかった。


私、やっぱり暁斗くんが大好き。

大好きな人のためなら、皆実家に……絶対勝ってやる。
そう強く心に決めれた。



「伊織〜!暁兄ひでぇよ!聞いてよー!」

「あはは!じゃあ3人でトランプしよっか!」

「いお、こんな奴放っとけ」


この時間がこれからもずっと続くように。