大嫌いな王子様 ー後編ー

(回想)

「おじいちゃん!ぼく、お友達と遊びに行きたいよ!」

「ダメだ。今から勉強の時間だ」

「どうして勉強ばっかり!?みんなと同じようにしたいよ!!」

「暁斗…お前次第でお母さんが苦しむことになるんだぞ?」


ドクンッー…


「お母さん…が……どうなるの?」

「さぁな。お前次第だ。この皆実家にいれなくなるのは間違いない」

「そんな…!」


ポンッ

ぼくの頭に手を置いたおじいちゃん。


「お前がいい子に頑張っていたらお母さんも幸せに過ごせるんだぞ」


うそだ。
ぼくは知ってる。


おばあちゃんや親戚の人たちがみんなお母さんを無視するんだ。

なのに…

お母さんは笑うんだ。


絶対悲しいのに笑うんだ。



「お前の行動が大切な人を苦しめるんだぞ?」


(回想終了)



ドクンッ!!!

【お前の行動が大切な人を苦しめるんだぞ?】


頭の中でじいさんの言葉がリピートされる。



「ひゅっ…」


呼吸が荒くなる。
ヤバイ、息の仕方がわからない。


「暁兄!?」

「坊っちゃま!?」


心の中が真っ黒いなにかに支配されていく感覚。
そしてやがて空っぽにされるんだ。
なにも考えられなくなるように。


嫌だ、いおと離れたくない。
だけど、それよりも…いおを苦しめたくない。

俺の存在って大切な人を…



バタンッ!!!



「暁兄!!?飯田さん!早く医者を」



また発作を起こしてそのまま倒れてしまった暁兄。
俺たちは暁兄を部屋に運んで、少ししてやってきた医者に診てもらった。




「点滴をしてやっと落ち着かれました」

「年末に急にすみませんでした」

「和希坊っちゃま、とんでもございません。ただ…久しぶりに発作を起こされましたね。…以前のようになにか追い詰めていないか心配です」

「大丈夫です。俺がなんとかしますから」


飯田さんに言って、しばらく部屋で暁兄とふたりきりにしてもらった。

呼吸も落ち着いて眠っている暁兄。


俺…甘えてばっかだったんだな。
こんなに負担ばっかかけてたなんて。



やっぱ俺は家が大嫌いだ。
いや、【家】じゃないな。

あのジジイが大嫌いだ。
そして、あのジジイの言いなりになってる父さんも大嫌いだ。

許さない。




「い…」


起きるか?


「いお……」

寝言か…。



俺はスマホで電話をかけた。



「今から車出してください。そう、今すぐに」