カタンッ
「楽しそうな話をしとるのう」
ハッとして声の方に振り向くとじいさんがいた。
「…聞いてたんですか?」
「誤解しないでくれよ。たまたま近くを通ったらお前たちの声が聞こえただけじゃよ」
じいさんがこっちに近づいてくる。
「皆実家の者とあろう者があんな一般庶民以下の女と交友があること自体許せんことじゃな」
「…は?」
「坊っちゃま、落ち着いてください」
そうだ。
冷静にならなきゃ。
挑発されちゃいけない。
「いおは関係ない。絶対なにもすんなよ」
「ほぉ〜。わしに向かってえらい言い方じゃのう」
もう全部わかってるくせに。
「遊びならなにも言うつもりはないから安心せい。仕事さえこなせば、好きなだけ遊べばいい」
「テメェと一緒にすんな!」
「坊っちゃま!!」
飯田の制御でなんとか自分を抑える。
「暁斗…口の利き方がなっとらんなぁ」
ジジイが近づいてきて、テーブルの上の御重を持った。
なにするー…!
ガンッ!!
次の瞬間御重を床に叩き落とした。
床に散らばるおせちの具材。
いおが作ってくれたおせち。
「ジジイ…!」
「暁斗、まだわからんのか?お前とあの娘との関係が…いや、あの娘の環境がこうなっても構わないのなら好きにすると良い」
ドクンッ!!
ヤバ…心臓がなんか…痛い。
「ひゅっ…」
息がしづらくなる。
「坊っちゃま!!」
しゃがみ込む俺に近づく飯田。
「相変わらずじゃのう暁斗は。わしがなにか言うとすぐパニックになりおって」
許せねぇ…
「ひゅ…いおに……なに…かっしたら…」
ガチャッ
「なんか物音したけど〜…暁兄!?」
和希がやってきた。
「どうしたんだよ!?」
和希はしゃがみ込んで苦しそうな俺のそばに走ってきた。
「よく自分に言い聞かせるんじゃな、暁斗。お前の父親の二の舞にならんように」
父さん…!?
くそジジイはダイニングを出ていった。
「飯田さん、早く医者を!」
「いや大丈夫。すぐおさまるから」
何年ぶりかわからないぐらい久々に起きた発作のようなもの。
「え…なにこれ?」
床に散らばるおせちを見た和希。
テーブルにも目をやる。
「暁兄はどうせほんとのこと言わないから飯田さんに聞くけど…これどうしたの?なんでこんなことになってんの?」
「ひゅっ…飯田、言わなくていい」
「じゃあ今から伊織に電話するね」
チッ…
「伊織様が坊っちゃまたちへと…いや皆実家のためにと作ってくださったものです」
「…へぇ〜……。あのジジイ、殺してくる」
ヤバイ
「待て!!…ゴホッ」
身体が思うように動かない。
「和希坊っちゃま、お願いです。今は…暁斗坊っちゃまのためにもどうか…」
「……暁兄」
和希が俺の前でしゃがんだ。
「もう俺もデカくなったんだし、ひとりで抱えないでよ。それが約束出来るんならジジイのところには行かないでいてあげる」
ボロ…
「暁…兄?」
うわっダサッ!!
和希の前で泣いてしまった。
俺は急いで手で擦って涙を拭く。
でも、なかなか涙は止まってくれない。
「わー!暁兄の泣き顔なんて小さい頃ケンカしたっきり見たことなかったからビックリ!可愛い〜!」
そう言って和希が抱きついてきた。
「はぁ!?テメェしばくぞ!!」
和希は俺の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「和希、いい加減に…!」
「うん、もういつもの暁兄だね。心配ないかな」
気付けば発作もほとんどおさまり、息も普通にできるようになっていた。
コイツ…
「じゃあ、一緒におせち箱に直そっか」
「あぁ…」
「俺が全部食べるね。伊織の愛を♡」
「あ?俺が食うに決まってんだろ」
散らかった具材を拾っているともうひとり、別の人間の腕がのびてきた。
「私も…いただきたいです」
「仕方ないねー!特別だよー飯田さん」
「感謝いたします」
あの頃とは違うんだな。
和希もこうしてそばにいてくれる。
「楽しそうな話をしとるのう」
ハッとして声の方に振り向くとじいさんがいた。
「…聞いてたんですか?」
「誤解しないでくれよ。たまたま近くを通ったらお前たちの声が聞こえただけじゃよ」
じいさんがこっちに近づいてくる。
「皆実家の者とあろう者があんな一般庶民以下の女と交友があること自体許せんことじゃな」
「…は?」
「坊っちゃま、落ち着いてください」
そうだ。
冷静にならなきゃ。
挑発されちゃいけない。
「いおは関係ない。絶対なにもすんなよ」
「ほぉ〜。わしに向かってえらい言い方じゃのう」
もう全部わかってるくせに。
「遊びならなにも言うつもりはないから安心せい。仕事さえこなせば、好きなだけ遊べばいい」
「テメェと一緒にすんな!」
「坊っちゃま!!」
飯田の制御でなんとか自分を抑える。
「暁斗…口の利き方がなっとらんなぁ」
ジジイが近づいてきて、テーブルの上の御重を持った。
なにするー…!
ガンッ!!
次の瞬間御重を床に叩き落とした。
床に散らばるおせちの具材。
いおが作ってくれたおせち。
「ジジイ…!」
「暁斗、まだわからんのか?お前とあの娘との関係が…いや、あの娘の環境がこうなっても構わないのなら好きにすると良い」
ドクンッ!!
ヤバ…心臓がなんか…痛い。
「ひゅっ…」
息がしづらくなる。
「坊っちゃま!!」
しゃがみ込む俺に近づく飯田。
「相変わらずじゃのう暁斗は。わしがなにか言うとすぐパニックになりおって」
許せねぇ…
「ひゅ…いおに……なに…かっしたら…」
ガチャッ
「なんか物音したけど〜…暁兄!?」
和希がやってきた。
「どうしたんだよ!?」
和希はしゃがみ込んで苦しそうな俺のそばに走ってきた。
「よく自分に言い聞かせるんじゃな、暁斗。お前の父親の二の舞にならんように」
父さん…!?
くそジジイはダイニングを出ていった。
「飯田さん、早く医者を!」
「いや大丈夫。すぐおさまるから」
何年ぶりかわからないぐらい久々に起きた発作のようなもの。
「え…なにこれ?」
床に散らばるおせちを見た和希。
テーブルにも目をやる。
「暁兄はどうせほんとのこと言わないから飯田さんに聞くけど…これどうしたの?なんでこんなことになってんの?」
「ひゅっ…飯田、言わなくていい」
「じゃあ今から伊織に電話するね」
チッ…
「伊織様が坊っちゃまたちへと…いや皆実家のためにと作ってくださったものです」
「…へぇ〜……。あのジジイ、殺してくる」
ヤバイ
「待て!!…ゴホッ」
身体が思うように動かない。
「和希坊っちゃま、お願いです。今は…暁斗坊っちゃまのためにもどうか…」
「……暁兄」
和希が俺の前でしゃがんだ。
「もう俺もデカくなったんだし、ひとりで抱えないでよ。それが約束出来るんならジジイのところには行かないでいてあげる」
ボロ…
「暁…兄?」
うわっダサッ!!
和希の前で泣いてしまった。
俺は急いで手で擦って涙を拭く。
でも、なかなか涙は止まってくれない。
「わー!暁兄の泣き顔なんて小さい頃ケンカしたっきり見たことなかったからビックリ!可愛い〜!」
そう言って和希が抱きついてきた。
「はぁ!?テメェしばくぞ!!」
和希は俺の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「和希、いい加減に…!」
「うん、もういつもの暁兄だね。心配ないかな」
気付けば発作もほとんどおさまり、息も普通にできるようになっていた。
コイツ…
「じゃあ、一緒におせち箱に直そっか」
「あぁ…」
「俺が全部食べるね。伊織の愛を♡」
「あ?俺が食うに決まってんだろ」
散らかった具材を拾っているともうひとり、別の人間の腕がのびてきた。
「私も…いただきたいです」
「仕方ないねー!特別だよー飯田さん」
「感謝いたします」
あの頃とは違うんだな。
和希もこうしてそばにいてくれる。



