大嫌いな王子様 ー後編ー


この日の夜、暁斗くんからメッセージが届いた。

『昨日楽しかった!ありがとう』


私も楽しかったよと打とうとしたら、もう1通届いた。


『しばらく会えない。ごめん』



ドクンッ

まぁ、年末だしね!
仕事忙しいよね!


『全然だよ!仕事忙しいんだね』

なに、この含みを持った文章。
自分で打っといてなんか嫌気がさす。

だけど…気になるもん。

本当に仕事なのか。


なにか、、あるんじゃないかなって思ってしまう。
暁斗くんや飯田さんの様子は明らかおかしかった。



ヴーッ


『うん、ごめん。落ち着いたらゆっくり会いたい』


会いたいって言葉にドキッとする。
だけどそれより気になるのは、ごめんの言葉。

暁斗くんがこんなに謝るのは珍しい。

ちょっと、いやだいぶ失礼。



ブンブンブンッ
頭を横に振る。
昨日が幸せ過ぎたから、こうやって考え過ぎちゃうんだ。


あの幸せがなくなるのが怖くて。



去年の年末もすごく忙しそうだったもんな。
気にしない、気にしない。

私も仕事頑張るんだ。




あれから数日経ってあっという間に大晦日。
連絡は毎日くれてて、それだけですごく嬉しい。
バイトの日は飯田さんがいつも迎えに来てくれている。


大晦日も夕方までしっかりバイト。

「暁斗くん…と和希くんは元気ですか?」

「はい。お二人とも変わらずお元気でいらっしゃいます」

「それならよかったです」



家に着いた。

「伊織様、本年も大変お世話になりました」

「こっこちらこそです!!たくさんお世話になりました!!」


あ、そうだ!

「飯田さん、ちょっと待っててください」


私は急いで家に帰り、ある物を取ってきた。



「こちらは?」

「おせちです!と言っても…セールの物ばかりで作ったもので恥ずかしいですが…」

おせち
今年の元旦、暁斗くんが美味しいって言ってくれたから。
調子に乗ってまた作っちゃった。


ううん
食べてほしくて作った。


「………」

「飯田さん…?」

あれ!?もしかして迷惑だった!?
てか、そりゃそうだよね!
豪華なおせちがあるのに絶対迷惑だよね!!

うわーー
やってしまった


「あ、ごめんなさい。これは…」
「伊織様」

少し俯いていた飯田さんが顔を上げた。

あれ…?
気のせいかな?
少し泣きそうな顔に見える。


「ありがとうございます。必ず…坊っちゃまたちにお渡しいたします」

あ、笑った
やっぱり気のせいだね。


飯田さんを見送って家に入る。


日付変わる時、暁斗くんに連絡しよう。
明けましておめでとうって。