「じいさん、お久しぶりです。お元気そうでなによりです」
「あぁ。暁斗も元気そうでよかったよ」
笑顔が優しそうに見えるのに
なんだろう
胸がザワザワする。
「今アメリカでしたよね?なんで日本に…?」
「ちょっと新事業に向けてやることがあってね。…おや、そちらのお嬢さんは?」
ドキーッ!!!
「あ…初めまして。あべー…「友人です」
え・・・?
「…そうか。クリスマスの次の日だし彼女さんと泊まってたのかと思ったよ」
「いえ、さっきフロントでたまたま会っただけです。俺も知り合いと来てたんで」
「そうかそうか、気をつけて帰るんじゃぞ。近々家に行かせてもらうよ」
「はい、ありがとうございます」
あの暁斗くんがペコリと一礼をした。
お爺さんが去る時、一瞬目が合った気がしたけど…気のせいかな。
それよりもさっきから暁斗くんの【友人です】が頭の中をリピートしている。
「とりあえず出よう」
そして明らか暁斗くんの様子もおかしい。
なんだか張り詰めてる感じ。
ホテルを出てすぐ暁斗くんが電話をした。
「悪い、今すぐこっちまで来てくれ。場所はー…」
相手は飯田さんかな?
私なにへこんでるんだろ。
ただ友人と言われただけじゃない。
だけど今までは彼女と紹介してくれてたのに。
なにか理由があるはずだよね。
「いお悪い。ここで解散だ」
「え…??」
「もうすぐ飯田が来る。送らせるから」
「えっと…暁斗くんは!?」
「俺はひとりで帰る」
「ちょっと待ってよ!なんで…」
キキーッ
「坊っちゃま、お待たせいたしました」
飯田さんがやってきて会話が中断した。
ところであの電話からむっちゃ早いなぁ。
「いおを頼む」
「かしこまりました」
「暁斗くん!」
「ごめんいお。あとで連絡するから」
あれ?
ほんの数分前まですごく幸せだったよね?
なにがどうなって現在(いま)になってるの?
なんであんな張り詰めた様子の暁斗くんをひとりにしなきゃいけないの。
「やだ、私も一緒に行く!」
「伊織様!お願いです。今は坊っちゃまの仰る通りに…」
飯田さん・・・
私は渋々車に乗った。
車が走り出し暁斗くんが遠退いていく。
さっきまで一緒だったのに、今は手が届かない存在になったみたい。
それぐらい暁斗くんの考えてることが見えない。
ーーーーーーーーーー
俺がホテルの入り口付近に戻るとじいさんと秘書たちが出てきたのが見えた。
やっぱりな…
マジうぜぇ。
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「伊織様、ご心配やご不安をおかけし申し訳ございません。先程お会いになられた方は坊っちゃまたちのお祖父様でございます」
やっぱりそうなんだ。
「そして我が皆実グループの相談役でございます」
相談役…???
「なにか…相談するんですか?」
・・・・・・
「ぶはっ!!」
少しの沈黙後、まさかの飯田さんが吹き出した。
「伊織様は本当に面白いですね」
「え!なんですか!?」
私なんか変なこと言ったかな!?
「コホ…いえ大変失礼いたしました。相談役というのは簡単に言うと会社の役職のようなもので我が社では1番の権限をお持ちでございます」
あぁ、恥ずかし過ぎて消えたい…
「そんなすごい人だったんですね」
「…どういうつもりか私共に全く情報が流れて来ず、急なご帰国でございました」
なんだろう。
やっぱり胸がザワつく。



