大嫌いな王子様 ー後編ー


「それはあんたらふたりとも悪いわ」

「ですよねー…」


昨日の夜、暁斗くんと無事仲直り?が出来たことをみっちゃんに電話で報告。

そして、イヴとクリスマスについても報告。


「当たり前に会うと思ってた御曹司くんもだし、自分から誘わないあんたもお互い様」

みっちゃん、てきびしー。



「まぁでも、夜だけでも会えるならいいじゃんか」

「うん、私もちょっと会えるだけでも嬉しい」


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イヴの日は夜のバイト終わりに迎えに来てくれて一緒に帰った。

そして本日クリスマス。
朝から夜まで通しのシフト。

でも、ケーキが売り切れれば早く上がっていいらしい。


「いらっしゃいませー!!クリスマスケーキ、いかがでしょうかー!?」

そんなこと言われたら、仕事にもより精が出るよね!

暁斗くんに1秒でも早く会いたいから、全力で声を出して売り切ってやる!



「ありがとうございましたー」

あと13個…
時間は18時を回った。
店頭販売も寒さで耳が痛いし、手もかじかんできた。

手を繋いで歩くカップルを見ると、なんか少しだけ胸がチクッとする。
自分で決めたくせにね。


「阿部さん、寒い中ごめんなさいね!代わりましょう!」

オーナーの奥さんも手伝いに来てくれている。


「ありがとうございます。でも、早く売り切りたいので頑張ります!」



ザッ

「これ売り切ればいいことあんの?」

え、この声は!


振り向くと暁斗くんがいた。



「まぁ!イケメンくんね!!」
奥さん、なんかテンション上がってる。


「い、いらっしゃいませ…ケーキいかがですか?」

私はよそよそしく接してしまった。


「あ?話聞いてたか?これ売り切ったらどうなの?」


ひえーっ!!俺様全開でくるじゃん!

「いお?」



「あらー、阿部さんのお友達??」

「あ、そうですねとも…「彼氏です」

自ら彼氏と言った暁斗くん。
やば…嬉しい。。


「まぁー!!!」

奥さんはテンション上がりっぱなし。
私はなんだか照れてしまう。


「彼氏さんいるのにこんな日に入ってもらってごめんなさいね!!もう上がっていいわよ!」

奥さん、絶対そう言うと思った。
だから隠そうと思った。


「いえ、仕事を決めたのは私ですから全然大丈夫です」

「でも…」


「暁斗くん、このケーキ売り切れば上がれるのであと少し待っててください」


ふーんと言ってジッと私を見る暁斗くん。



「あと何個だよ。俺全部買うわ」

出た!!!金持ち発言!!!


「それは絶対ダメ!!やだ!!!」

「なんでだよ。売り切ったらいいんだろ?」

「意味が違うから!暁斗くんが全部買うのは違うよ!」


「はー…ったく……」

迷惑かけたくないのにため息吐かせちゃった。。



「じゃ、俺も働いていいっすか?あ、給料はいらないんで」


はい!!??


「いらっしゃいませー。クリスマスケーキいかがですかー?」


「ちょっと…暁斗くん!?」

「え、彼氏さんちょっと…!!」


私と奥さんの戸惑いをよそに、暁斗くんが売り出すと女性たちが足を止めだした。



「お兄さんカッコいいねー!名前教えてー」
「ケーキ買ってくれたら」
「お兄さんの笑顔で買いたくなったわー」
「どーも」


う…そ………


「全部売れました」

あれから15分ほどで全部売れてしまった。


す、すげー・・・


「まだなにか売るものあったら売っちゃいますよ?」

「今日は大丈夫!!ただ…たまに来てくれない!?ちゃんとお給料出すので!!」


奥さんは暁斗くんを必死にスカウト中。


「いおと働かせてもらえるならいいっすよ」

あ、ニヤッとこっちを見て笑ってる。


みんな、、やっぱり顔なのね!!??
こんな意地悪俺様野郎でも買いたくなるのね!!??





「お疲れ様でしたー」

暁斗くんのおかげで19時前に上がることができた。



「暁斗くんありがとう。お礼になにかご馳走させて」

「そんなのいらねぇし」

「でもー…!」


チュッ

「じゃあ今からのデート、しっかり楽しんで」


あ、甘い…甘過ぎて怖い!!!


「人前だよ!!キスはダメだよ!!!」

「俺がしたくなったらするって言ったろ」


この相変わらず俺様め〜!!




「ほら、行くよ」

そう言って手を出す暁斗くん。


あれ、なんだろう。

一昨日話してから、前より暁斗くんを知れた気がして胸がぎゅーってなる。



「うん!」

ダメだ…いつも想ってしまう。
この繋いだ手が温かくて離したくない。