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「え?夜ご飯もウチで食べていく??」
「あぁ。いいよな?」
そりゃ、ノーとは言えないけど…
「暁斗くん…普段のような豪華な食事じゃないよ?」
ものすごーくシンプルだよ?
「え、お前の朝飯は豪華じゃなかったけど」
カチンッ
キモ野郎モードオンだ。
「あー、そうですか。それは申し訳なかったですね!」
棒読みで言ってやった。
「俺はそれが好きだったんだけど?」
暁斗くんはズルい。
私は暁斗くんのひと言ひと言に振り回されてしまう。
ささっと作った野菜炒め。
それとご飯とお味噌汁。
皆実家の食卓とは比べ物にならない。
「いただきます」
手を合わせてから暁斗くんがご飯を食べ始めた。
暁斗くんがウチで食べている。
すごく不思議な光景。
「暁斗くん、飯田さんたちにはここにいることちゃんと伝えてるの?」
「あぁ」
そう答えてもくもくと食事を続ける。
「お姉ちゃんのご飯、やっぱり美味しいね」
「晴、ありがとう」
私たち家族の中に暁斗くんがいる。
それだけで、すごく嬉しい。
夜ご飯も終わって私は片付け中。
お母さんと晴には先にお風呂に入ってもらった。
洗い物中、後ろからものすごい圧を感じる。
「ねぇ…暁斗くん」
「あ?」
すでにちょびっと喧嘩腰!?
「もうすぐ21時だけど…帰らなくて大丈夫?」
「帰ってほしいなら帰る」
なんちゅー言い方すんねん。
「あのね、そんなこと言うわけない…」
そう言った瞬間、後ろから抱きしめられた。
「いお…俺だけか?こんな寂しいのって…」
暁斗くんの言葉で胸がぎゅーっとなる。
暁斗くんの声が少し弱々しく聞こえる。
でも声とは裏腹に、抱きしめる力は強くなる。
「私だってすごく寂しいよ。でもね…」
ガチャッ
お風呂のドアの開く音が聞こえた。
「暁斗くん、離れて!」
お母さんたちが来ちゃう。
「帰るわ」
「え!?」
それ以上はなにも言わず、暁斗くんは帰っていった。
結局、ちゃんと話せてない。
私の気持ち、ちゃんとわかってくれてるのかな?
「あら?暁斗さん帰っちゃったの?」
「あきお兄ちゃんとまだ遊びたかったー!」
「うん、帰っちゃった。晴はもう寝る時間だよ」
晴を寝かせて私もお風呂に入る。
寝る準備も出来てお布団へ。
お母さんたちは先に寝ちゃった。
スマホを触ってたら気づけば23:45。
全然寝れない。
暁斗くんのことが気になって、モヤモヤして全然寝れない。
連絡しようかな。
寝てるかな。
ヴーッ
そんなことを考えていたら、メッセージを受信した。
ビックリしたぁー…。
メッセージを開くと暁斗くんから。
『まだ起きてる?』
私はすぐ返信した。
「うん!」
数十秒後、返事がきた。
「今すぐ出てこい」
はい???
出てこいとは…??
『家からってこと?こんな夜中に?』
こう返事をしたら
『同じこと何度も言わせんな。出てこい』
到底彼氏からとは思えない俺様な返事がきた。
もう、なんなの。
こんな時間に!!
私はお母さんたちを起こさないように、そーっと家を出た。



