大嫌いな王子様 ー後編ー


「伊織が会いたいって思ったらすぐ飛んでいく。デートだってたくさんしたい。隣で笑ってほしい。髪も顔も手も…全部触りたい」



ドクンッ
まっすぐと私を見る目。
文化祭の時にもあった、真剣な和希くんだ。
全然ふざけてない。



「あ…私は暁斗くんが大好きだから」

「わかってるよ。でもさ、だから諦めなきゃいけないの?」

「え、なに言って…」

「俺を見てもらえるように努力するのはいいよね?」

「そんな…!」


和希くんは暁斗くんと違って甘えたさんで
そして



「伊織は俺にとって、世界でいちばん大好きで大切な女の子だよ」


素直で、全部言葉で伝えてくれる。


「伊織しか見てない。大好きでたまんないから」


こんな私に、、、
身にあまり過ぎる言葉をくれる。


暁斗くんに言ってほしいと思ってしまう言葉まで。




パッ

和希くんが私からようやく離れた。


「もう家だし今日は帰るわ」

「あ…えっと、、そだ!コーラは!?」

「えー、伊織まだ俺といたいのー?」


日本語が通じてない。


「聞いてた!?コーラはって言ったの!」

「まだ一緒にいたいって言うならいてあげるよー」

「………帰って」


今度から英語とかで話してやろうか。(全然英語出来ないけど)




むにっ
和希くんが私のほっぺをつねる。


「やっといつもの伊織になったー」

そう言って無邪気に笑う。


私のためだったの…?
2つ年下なのに、、、気まずくならないように考えてくれてる。。



「私はね、やっぱり暁斗くんが…「あれー?お姉ちゃんに和希兄ちゃん!」


晴!?

アパートの前で話してたせいか、晴が家から出てきた。


「お姉ちゃん遅いから心配になってお外見ようとしたらいたー!」

アパートの階段を降りてこっちにやってくる。


「晴ごめんな。お姉ちゃんとちょっと喋ってたんだよ」

「全然いいよー!和希兄ちゃん、お家くる?」

「今日は帰るわ。またね伊織、晴」


結局和希くんに送ってもらって、なにもお礼も出来ていないまま。


「バイバーイ和希兄ちゃん!」


和希くんにちゃんと断らなきゃ。
どう伝えればわかってもらえるかな。


私と暁斗くんの関係って…やっぱり変なのかな。



デートだって…したいもん。

大好きだもん。


ーーーーーーーーーーー


「和希!」


伊織の家から少し離れた所で暁兄と会った。


「お前…さっきいおにー…」

「えー見てたの?えっちー」


ガシッ
暁兄に胸ぐらを掴まれた。



「苦しいんだけど」

「ふざけんなよテメェ!!もういおに近づくな!!」

「それは無理」

「かず…!」


俺は暁兄の腕を解いて押しのけた。



「言ったよね?油断したり伊織を泣かせたらほっとかないって」

「………」

暁兄の気持ちはわかってる。


「伊織を守りたいんだろうけどさ、仕事仕事でデートもロクにしてやれない構ってやれないってどうなの?」

「それは…」

「伊織がなんも思ってないって思ってる?我慢させてんの気づかないの?」


俺だって暁兄がいるから、こうして自由に出来てる。


「俺ならそんな想いはさせない」

最低な弟でごめん。



黙り込む暁兄をおいて、俺は先に家に向かった。
途中飯田さんがいたけど、俺は車には乗らず歩いて帰った。

あんな悲しそうな顔の暁兄を初めて見た。



あれ…
俺、なんで泣きそうなんだろ。。。