お母さんも無事退院していつも通りの生活に戻った。
「もうすぐクリスマスだね〜」
「今年も御曹司くんと過ごすの?」
「なにも決めてないよ。イヴとクリスマスの日はケーキ売らなきゃだからバイトに入ったし」
「さすが伊織。御曹司くん聞いたら悲しむよー。一緒に過ごせないって」
「んーどうかな?暁斗くんも仕事忙しいし逆に迷惑とかかけたくないし」
「迷惑?なにが??」
「無理して時間作ってもらうのは悪いなぁと思って」
会うことは出来ている。
バイト先のコンビニに迎えに来てくれたり、私も学校帰りに会いに行ったり。
それだけで十分嬉しい。
だけど、デートは私の誕生日以来していない。
「よくわかんないけど…好き同士で迷惑とかある?無理な時はほんとに無理として、彼女から会いたいやデートしたいって言われて嫌な奴ヤバくない?伊織は御曹司くんに言われたら嬉しいでしょ?」
みっちゃんの仰る通り。。。
「うん…」
「変な気遣ってすれ違わないようにね」
すれ違い…か。
そんなの、大丈夫だよね。
ーーーーーーーーーー
「お疲れ様でしたー」
ウィーン
「え‥?」
「お疲れ様♪」
コンビニを出ると和希くんがいた。
「あれ?なんで!?」
「暁兄か飯田さんじゃなくて焦ってる?」
「そういうわけじゃないけど…てか寒かったでしょ!?」
「んー伊織に会えたから平気〜」
そう言って和希くんは私に抱きついた。
おわー!だから距離感ー!!!
「こらー!離れてー!」
「なんで?この方があったかくない?」
「そういう問題じゃないから!」
もう和希くんは…相変わらず甘えたさん。
「和希くん、まだ中3だしこんな時間に危ないよ」
「なにそれ、子ども扱いしないでよ。女の子の伊織の方がひとりで歩いてて危ないんだから」
あれ?なんかご機嫌ななめになっちゃった…?
「心配しただけだよ、ごめんね?」
あれ?和希くんの方を見てふと気づいた。
「和希くん、背伸びた?」
「ん?そう?」
「うん!なんか前よりちょっと見上げてる気がする」
絶対伸びてる!もうちょっとしたら暁斗くんに追いつきそうなぐらい。
「そっかな。まぁ、俺はちゃんと成長してるから心配とかいらないよ」
年下だけど、たまに年上に見える時がある。
「喉乾いたなぁ〜」
「ウチ着いたらなにか飲む?」
「飲むー!コーラ飲みたい!」
「あるかなー?」
中身は甘えたさんだけどね。
ーーーーーーーーーーー
「え…なんで飯田がここにいんの?」
「和希坊っちゃまが本日は暁斗坊っちゃまに自分が迎えに行くと話したと仰いまして…」
は……???
アイツー…!!
「ちょっと出る!」
「坊っちゃま!?」
ーーーーーーーーーーー
もうすぐ家に着く。
「なぁ…クリスマスとかやっぱデートすんの?」
「え?なにも約束してないよ。イヴもクリスマスもバイトだし」
「…は?来週の話しだぞ?クリスマスはデートするもんじゃないの?」
「うーん、暁斗くん忙しいしね。邪魔したくないし迷惑かけたくないから」
「なにそれ…。変なの」
え?
「好きだったら会いたいだろ?デートしたいだろ?思い出作りたいだろ?なんで気遣ってんの?」
わ、なんだろ。
和希くんの言葉がグサって心に刺さる。
「そもそもさ…伊織も暁兄のこと好きなの?好きならクリスマス2日間もバイト入れる?」
それは…!!
「好きだもん!!なんでそんなこと言うの!?」
「俺ならそんな日にバイト入れない」
わかってるもん…。
他のバイトの子たちはデートや遊びに行くって希望してなかったから。
「ひとつは…もし暁斗くんとデート…出来なかったらショックだから先に仕事を入れたの。。」
「ひとつ?」
外の空気が寒くて手がかじかむ。
「もうひとつの理由は…暁斗くんにクリスマスプレゼントあげたくて……家に入れる分を補うためにクリスマスとかは時給が上がるから入ったの」
あ、ヤバイ。
なんでだろ
「“普通”は予定空けるよねー。これだから貧乏は困っちゃうよね!」
なんとか笑いたいのに
「伊織……」
涙が出ちゃう。
ぎゅっ!!
「ごめん!意地悪なこと言った…ほんとにごめん!」
外の寒さのせいか、和希くんに抱きしめられて体温で暖かくなる。
「大丈夫だよ。和希くん、離して…」
ぎゅうーー!!
ダメだ、抱きしめる力が強くなってる。
「あのね、全然怒ってないから大丈夫だよ」
「俺ならそんな想いさせないから」
「え…?」
和希くんが私を見る。



