大嫌いな王子様 ー後編ー


寂しくなっちゃうからお互いいつも通りにバイバイすることにした。

家まで送ってくれた暁斗くん。


「明日お見送り行くね」

「…うん」

「また明日ね」

「じゃあな」

車に乗って帰っていった暁斗くん。

とうとう…行っちゃうんだね。


ーーー次の日の朝ーーー

というか、暁斗くんとバイバイしてから一睡も出来なかった。
今日なんて来なければいいのに…なんて思っちゃうことも。

だけど、もうほんとに大丈夫。
一晩しっかり考えて、気持ちもスッキリした。

笑ってお見送り出来る!!
てか、するんだ!!


「伊織、準備は出来てるの?」

「うん。お守りも持ったよ」

せめてなにか渡したくて…
アメリカで健康に過ごせるように神社でお守りを買った。


7時半頃。
スマホが鳴った。

こんな朝早く誰かな?
ディスプレイには和希くんの名前が。


「もしもし」

「伊織!?今どこ!?」

「え、まだ家だけど」

なんだか焦ってる和希くんの声。


「チッ…あのくそ兄こんな時まで…!」

ん???
ケンカ中???

「和希くん、どうしたの?」

「暁兄、俺にも黙って行くつもりで父さん問いただしたら10時発の飛行機乗るって!」


は…???

「え…それどういう…」

聞いてた時間と違う。


「今そっち向かってるから、あと2分ぐらいで着く!すぐ家出れるか!?」

「う、うん!!出る!!!」

全然意味がわかんない。



少しして和希くんがやってきた。
急いで車に乗る。


「空港まで急いで」

飯田さんじゃない、別の人が運転をしてくれている。

「しかし坊っちゃま、この先渋滞がひどいようで…」

「は?道交法引っかかんない程度に飛ばして。出来るよね?」


サーーー・・・

横で、初めて見る?ぐらいの和希くんの圧を横で感じる。
でも、それぐらい急いでくれてるってことだよね。


それもこれも……

「アイツのせい…」

「え?」

私がボソッと言ったせいで聞き直す和希くん。


「アイツがこんな面倒くさいことしたから、こんなことになってんのよー!!あのキモ野郎ー!!!」


「伊織…あの……車だからそんな叫ぶと……」

私の怒りは収まらない。


「許さない!!あの大バカキモ野郎!!!」

「・・・・・・」

私のキレ具合に和希くんが引いていたけど、今はそれどころではない。



8:28

空港に着いた。

「ありがとうございます!!」

運転手さんにお礼を言って車をおりる。


しかし・・・


空港、初めて来たから全然わかんないーー!!!!

どうしよう。。
暁斗くん、電話にも出ないしメッセージも返ってこない。


「伊織!!こっち!!!」

和希くんが手を引っ張って私を連れていってくれる。

ふたりで空港内を猛ダッシュ。
周りにかなり見られてるけど、そんなこと関係ない。


「あ!あそこだ!出国審査済ましてねぇだろうな…」

「え!?」

「会えなくなるかもってこと!」

そんな!?


とにかく走る。


「ハァハァ…このへんにまだいるはずだけど…」

「和希くん…ありがとう」

「俺に礼はいいから暁兄探そ」

「うん!」

あたりを見渡して暁斗くんを探す。
人が多くてなかなか見つからない。

もしかしたら、もう搭乗口っていう所に向かったかもしれない。

でも…諦めたくない、絶対見つけてやる!!!


お願い…!!




ガシャンッー・・・!!!

少し向こうから大きな音がした。

そっちを見ると、飯田さんに似た人が見えた。


「うそ…」

「伊織?」

私は和希くんに返事する余裕もなく、音がした方へ走っていく。


絶対飯田さん。
そして、その隣にいるのは絶対…


息が荒くなる。



「暁斗くん!!!!!!!」


空港に響くんじゃないかってぐらいの大声で叫んだ。



男の人がこっちに振り向く。


「い…お……」


飯田さんは倒れている大きなキャリーを立てようとしていた。



ドカッ!!!

「いてっ!!」

私は持っていた鞄を思いっきり暁斗くんに投げつけた。



「バカバカ!!大バカキモ野郎!!!なに考えてんの!?信じらんない!!!」


会えた……

だから余計に怒りが込み上げてくる。



「普通…ちゃんと挨拶するでしょ!?そんなことも習ってこなかったの!?」

声も震える。



「ごめん。いおの顔見たら決心が揺らぎそうだったから。勝手でほんとにごめん」


なによ…


「男のくせに!!しっかりしなさいよ!!」


私は…どの立場で言ってんだってちょっと冷静になって思うけど…

私だって決心ぐらぐらで


「私だって…今だって行かないでって言いたいもん…」