「少しウチ寄ってく?」
「うん。いいの?」
「当たり前だろ」
迷った。
余計寂しくなるんじゃないかって。
いつも通りに過ごすのが1番いいんじゃないかって。
だから、バイトも入れようとしてた。
だけど…やっぱりギリギリまで少しでも一緒にいたい。
「坊っちゃま、伊織さんおかえりなさい」
「牧さん、父さんは?」
「お部屋にいらっしゃいます」
「いお、俺の部屋で待ってて。先に父さんのとこ行ってくる」
「わかった」
暁斗くんは暁おとの部屋に向かった。
「伊織さん、なにか不安なこととかありましたら…私でよければいつでも話してくださいね」
「牧さん…ありがとうございます」
でもゴールが見えてるから
「暁おじに勝ってみせます!」
「ふふ。そうですね。あ、なにか温かいお飲み物ご準備しますね」
「私も手伝います」
明日笑顔で見送れるように。
ガチャッ
「お待たせ」
暁斗くんの部屋で紅茶をご馳走になってた。
ドサッ
暁斗くんが私の隣に座った。
それだけでドキドキしてしまう。
「なぁ、写真撮らねぇ?」
「え?」
なんか…暁斗くんから言ってくれるのが意外で目がパチクリしてしまった。
「あ?なんだよ。嫌ならいい」
「なんで!!嫌なわけないよ!!」
よく見ると暁斗くん、顔が赤い。
照れてる?
「えへへ。ありがとう」
恥ずかしいのに言ってくれたのかな?
嬉しいな。
お互い近づいてスマホを見る。
改めて…なんか照れちゃう。
「はい、チーズ」
撮った写真を見る。
顔面の完成度の違いに吐き気はするが、大切な写真になった。
「待ち受けにしていい?」
「好きにしろ」
おわっこれまた珍しい。
やったー。
「暁斗くん、明日の12:30の飛行機だよね?」
「…あぁ」
「見送りに行くからね!」
「………」
暁斗くん?
グイッ
「ひゃっ」
いきなり後頭部に手を回されたと思ったら、暁斗くんからのキス。
そこから深くなっていくキス。
気づけば座っていたソファに私は寝転んだ状態になっていた。
ドキドキと鼓動がうるさい。
「いお…」
キスの合間に優しいトーンで私を呼ぶ声。
キスが首元に移った。
ぢゅっ
そして鈍い痛みが数回走る。
「ん…暁斗くん……」
ぎゅうっ
私は上にいる暁斗くんを抱き寄せて、暁斗くんの耳に軽くキスをした。
「なっ…いお!?」
「…この前出来なかったから……しよ?」
私の心臓は爆発寸前。
顔だって真っ赤で茹で蛸状態だと思う。
だけど、これは素直な気持ちだから。
「んっ…」
暁斗くんからのキスが続く。
そして、髪を優しく撫でられたかと思ったら私を抱きしめた。
「いお…ありがとな。すげー嬉しい。でもさ……俺のワガママ聞いてくれる?」
耳元で聞こえる暁斗くんの声。
「なんでも聞くよ」
「情けねぇけど…今これ以上したら…俺いおのそばから離れたくなくなってアメリカ行けない気がすんだよ。ずっとそばに置いておきたくなっちまう」
暁斗くん…
「せっかくいおが言ってくれたのにごめん…」
よかった
「やっぱり私たちは繋がってるね」
「…え?」
暁斗くんが顔を上げて私を見る。
「私も…こんなこと言いながら、もしこれ以上しちゃったら離れられなくなりそうで…不安もあったの」
そんな風になる自分が怖かった。
「帰ってきたら…今度こそ覚悟しとけよ?」
「もう気を失いません」
「バーカ」
これが私たちらしい、だよね?
「俺の声とか忘れんなよ」
「あ!!録音したいと思ってたの!いい!?」
「それはやめろ!」



