大嫌いな王子様 ー後編ー


理香ちゃん?
なんだろう…


暁斗くんからスマホを受け取った。


「もしもし」

「伊織ちゃん!?よかった、暁斗と一緒で。電話繋がらなかったからさ」

「さっきまで入試で。電源切ってたの、ごめんね」

理香ちゃんの声が少し焦っているように聞こえた。



「あのさ、暁斗から卒業後のこととか聞いてる!?」


ドクンッ!!

アメリカ…のことだよね?
結局、暁斗くんの口からはまだ聞けていない。



「…知ってはいるけど……」

私は少し暁斗くんから離れて小声で話した。
その様子を見ていた暁斗くんが、私に近づいてきた。



「はぁー……アイツ、伊織ちゃんにちゃんと話してないんじゃないかと思って。私もさっき知ったんだけどさ…」


そばに来た暁斗くんが私の腕を掴んだ。


「ちょっと…離して…」

一瞬暁斗くんに気がいった時だった。


「暁斗さ、アメリカ行ったら3年間伊織ちゃんと連絡はもちろん会ったりも禁止されたって」


へ………?

衝撃的な言葉が聞こえた。


「3年間…会えない、連絡取れない…なんて別れたのと変わらないよね。最低だよ、あのジジイ。このこと聞いて暁斗のことだから…嫌な予感して……」


腕を掴む暁斗くんをジッと見た。


暁斗くん、これが別れた理由なの?
また、ひとりで抱え込ませてしまったの?


「理香ちゃん…教えてくれてありがとう…」

私は震える声でなんとかお礼を言った。


「さっきお父さんが電話してるのがたまたま聞こえてさ…今からお父さん問いただすから、また連絡するね!」

理香ちゃん…ほんとに良い人。


「あり…がとう……」

涙が溢れてきた。


「今暁斗と一緒だよね?簡単に言えないのはわかってるけど……別れるとか考えちゃダメだよ。ジジイに負けないでね」


みっちゃん以外には、佐伯くんたち含めて誰にも別れたことを言ってなかった。
というか、自分で言葉にするのが嫌だった。

認めたくないという、私のワガママな気持ちだった。



「うん、大丈夫だよ。ありがとう」

この涙は暁斗くんに悩ませてしまったことへの涙。
そして、暁おじへの怒りの涙。


電話を切ってスマホを返した。



「なんで泣いてんだよ…」


私の涙を拭おうとしてくれた暁斗くんの手を握った。



「アメリカはいつから行くの?」


暁斗くんが目を見開いた。


「3年間行くの?」


会えないし、連絡も取れない。


「その間、音信不通ってことだよね?それが別れた原因?」


きっと暁斗くんのことだから、私のことを想って…


暁斗くんがフイッと目を逸らした。

私はムッとして、暁斗くんの顔をこっちに向けた。



「ちゃんと応えて。大切なことだよ」

お願い


「もうひとりで抱え込まないって約束したでしょ?」


暁斗くんの目が少し赤くなっていることに気づいた。
そして目が潤んでいることも。



ぎゅうっ!!

思いっきり抱きしめた。


「暁斗くん…私、なにがあっても大好きなの変わらないから」


もう2度と迷ったりしないから。
お願い、この気持ち少しでも届いて。


ぐすっと鼻をすする音が聞こえた。
そして、私を抱きしめ返してくれる強い力。


やっと…見えた気がした
暁斗くんの気持ち。