大嫌いな王子様 ー後編ー

「…美味しい」

「でしょ?」


なんだか掴みきれない人。
だけど、前から悪い人にはどうしても思えない。



「暁斗さんと付き合ってるんでしょ?結婚するの?」


ゴフッ
「あっつ!!」


金澤さんの言葉に動揺して、飲んでいた紅茶を吹いてしまった。


「まぁ…汚いわ」


すんませんね。
そんな普通に言わないでください。



「…付き合ってます。でも、結婚とかは…まだまだ先のことでわからないです」


「あなた…暁斗さんのこと好きなの?どうせ家柄などに惹かれたんじゃないの?」



ムッ

「違います。暁斗くんの家柄とか全く関係ないです。私は暁斗くん自身を好きになったんです」



「…そう。なら頑張んなさいよ」

「え??」

金澤さんも暁斗くんを好きなんじゃ…


「先に言っておくけど、暁斗さんのことはもう諦めてるわよ?彼、あなたのこと以外眼中にないんですもの」


ボッ…
金澤さんの言葉が嬉しくて、顔が赤くなるのが自分でもわかる。


「なに自惚れてんの?あなたみたいな人、ボーッとしてたら捨てられるわよ」


やっぱり嫌い、この人。



「この前の…うちの会社が傘下に入ったことによる会が開かれたでしょ?皆実会長には気をつけなさいよ」

「どういう意味でしょうか…?」


「うちが業務提携ではなく傘下になったのは暁斗さんの腕よ。皆実会長は暁斗さんの仕事の力を最大限に出させるためにはどんなことも平気でする。私との婚約だって…絶対嘘ってわかってたのにね…。心のどこかで間に受けたい自分がいて…」


金澤さん…
暁斗くんのこと、好きなんだよね?


「誤解しないで。もうほんとに暁斗さんには興味ないの。ただ…あなたには会長の話をしておきたかったから…」


「金澤さん…ありがとうございます」

金澤さんの優しさがすごく嬉しい。


「べ、別に…ダンスの練習の時に…少し失礼な態度を取ったかしら?と思ってただけよ」


照れながら言う様子がなんだか暁斗くんと似てて、私は笑ってしまった。



「金澤さんってやっぱり素敵な人ですね」

「なにそれ。おだてても何も出てこないわよ」

「別になにもいりません」


美味しい紅茶とケーキをご馳走になって話していると、あっという間に1時間が経とうとしていた。


「優聖まで送らせるわ」

「え!でも悪いです!」

「私がお招きしたんだからいいのよ」


運転手さんが車のドアを開けてくれる。



「金澤さん」

「なに?」

「また…お話ししに来てもいいですか?」


「……暇つぶしにはなりそうだし…いいわよ。その時は敬語はやめてよね」


やっぱり暁斗くんに似てる。


「ありがとう。楽しみにしてるね。紅茶とケーキ、ご馳走様でした」



私は車に乗り、優聖に向かってもらった。





「……やっぱり変な子」
助けてあげたくなるじゃない。。
忖度なしに話してくれる子が周りにいないのに

あの子は普通に接してくれた。


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「送ってくださり、ありがとうございます」


優聖まで送ってもらい、校門前で暁斗くんを待つ。


「あれー?伊織じゃん」

「佐伯くん!」


お久しぶりの佐伯くん。


「なに〜俺に会いに来たの〜?」

「まさか」


佐伯くんとじゃれてると、なにやらものすごい圧を感じてゾクッとした。




「ぐえっ!!」

制服の襟元を引っ張られて苦しそうな佐伯くん。


「触んじゃねぇ」


暁斗くん!!
やっと会えた!!


「いお…なにやってんの?てか、なんでここにいんの?」


なんだかちょっと呆れたような表情に見える。
会いにきちゃいけなかったのかな・・・