深夜1時を過ぎた頃。
ダイニングの近くを通ると声が聞こえた。
ドアが閉め切られてなくて、ほんの少し開いていたからのようだ。
「なにニタニタ笑ってんだよ」
「えっ!ニタニタとかしてないし」
「してる。キモイ」
坊っちゃま…相変わらず。
どうやら、暁斗坊っちゃまと伊織様がお話なさっている様子。。
「暁斗くん、最近気持ちを言ってくれることとか笑ってくれるのが多くなったなぁと思って」
これ以上聞いてはいけませんね。
そっとその場をあとにした。
坊っちゃまが伊織様に出会った頃…
(回想)
伊織様が皆実家で働くと決まった時ー…
「いいな?いおの前で俺の名前を呼ぶなよ」
「かしこまりました。ですが、やはりまずは自己紹介をきちんとされた方がよろしいかと…」
「いいんだよ。まずは俺に興味を持たせねぇと」
「せっかく同い年ですのに、そちらもお伝えされないのですか?」
「アイツが興味持つまでは言わない」
暁斗坊っちゃまは昔から、少し曲がった所がございます。。
それからしばらくしても、伊織様が坊っちゃまのお名前を呼ぶことがなく
暁斗坊っちゃまも意地っ張りで、なのにショックを受けやすく
どうなることかと思っておりましたが…
あの、深夜に伊織様とお話した日
「お父さんとはなかなか会えないし家族とは離れてるかもしれないけど、こうしてそばに飯田さんや牧さんたちがいてくれているじゃないですか。暁斗くんを見てると、飯田さんたちを信頼しているのがすごく伝わるので、寂しくなんかないと思いますよ」
伊織様が坊っちゃまのお名前を言った、なにより坊っちゃまをすごく見てくれていた
そのことがとても嬉しかった。
坊っちゃまの前でもお名前を呼んでいるのを確認して、私も【暁斗坊っちゃま】とお呼びするようにした。
(回想終了)
そんなふたりの今の会話を聞くと、なんだか胸がいっぱいになります。
暁斗坊っちゃまの不器用な愛が、少しでも多く伊織様に伝わりますように。



