「うわー!!!起きろ、起きろー!!!!」
大きな声に起こされた朝。
「なに一緒に寝てんだよー!!」
犯人は和希くん。
「んなことよりテメェ!勝手に入ってきてんじゃねぇよ!しかもいおの部屋に!!」
寝起きも重なり、かなり機嫌が悪い暁斗くん。
「珍しく伊織が起きてこないから起こしにきたんだよ!!暁兄のせいだな!?」
「理由になってねぇよ!!消えろ今すぐに!!」
あのー…
「兄弟ゲンカは部屋を出てやってください」
私も寝起きが悪かった。
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勉強6時間、そのあとバイトに行って帰ってきてお風呂もご飯も全部済ませた。
よしっ!
23時だけど、今日は暁斗くんまだ仕事があるからその隙にパパッとお礼のお菓子を作っちゃお。
昨日買ってきたものをキッチンに並べる。
色々迷ったけど、クッキーを作ることにした。
昨日、激安スーパーに千円を握りしめて材料を調達した。
バターは常温で置いてたし、オーブンも温めてるし準備万端。
「チョコチップ味も作ろー♪」
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「いい感じ♪」
ちょっと形は歪なものもあるけど、我ながら美味しそうに焼けたと思う。
味見をしようとしたら、左肩にのしっと重みを感じた。
「なにしてんの」
「うわっ!!!驚かさないでよ!!」
「3分ぐらい前からドアのとこで見てたけど、気付かねぇから」
「いや、声かけて」
驚かした犯人は暁斗くん。
「うまそ。食べていい?」
「待って。先に味見するから」
「いおが作ったものなら絶対うまいって♪」
そう言って暁斗くんは、形が歪なチョコチップクッキーを食べた。
ドキドキ。。
もし美味しくなかったらどうしよう。。
「ほら。やっぱりうまかった」
こっちを見てニッと笑う。
ドキンッ!!
もう、、この人は。。
どこまでドキドキさせるんだ。
「んで、なんでクッキー焼いてんの?」
「その…勉強見てもらったお礼をなにかしたいなぁって……」
「もしかして昨日の買い物はこれのため?」
「うん。でもこれじゃお礼にもならないよね。ショボくてごめんね」
お金なくて、豪華なものとか渡せない。
暁斗くんがもう一枚クッキーを食べた。
「は?なにがショボいの?いおが俺のために作ったんだろ?すげー嬉しいんだけど」
大好きなところがいっぱいだけど、私はこの人のこういう所が特に好きなんだと思う。
当たり前に人のことを想える人。
「これ、全部俺のだよな?」
「えっと、たくさん作ったから和希くんや飯田さんたちにも食べてほしくて」
「は?そんなの無理」
こういう子どもみたいな所はあるけどね。
「こんなにたくさん食べたら体悪くするから」
「ほかの奴にあげる方が悪くなる」
意味不明なことも言うけどね。
「暁斗くん、寝なくていいの?」
「まだ眠くない」
時間はもうすぐ深夜1時になろうとしている。
「なにか飲みものくれる?」
「うん」
キッチンからダイニングに移動して、クッキーを少し食べながら紅茶を飲む。
夜中にクッキー…いいんだろうか。
でも、なんとも優雅な時間なんだろう。
クッキーに紅茶って、私にとってはおしゃれ過ぎる。
「いお、今度チーズケーキ作って」
いきなりの暁斗くんからの要望。
「…うん!もちろん!!」
暁斗くんからお願いしてくれるの、嬉しいな。
「なにニタニタ笑ってんだよ」
「えっ!ニタニタとかしてないし」
「してる。キモイ」
今すぐ部屋戻ったろかな。
「キモくてすみませんね。暁斗くんがお願いしてくれたから嬉しかっただけだし」
「はは!そっか。それは悪かったな」
暁斗くんは、最近笑うことも増えたと思う。
「なんだよ、さっきから」
私がジッと見過ぎたんだろう。



