大嫌いな王子様 ー後編ー

(回想)

高1の5月、私はクラスに馴染めず変わらずひとりでいた。

「阿部さん?次、理科室移動だけどわかってる?」

「ふえっ!?」

いきなり話しかけられて焦って変な声が出てしまった。


「あはは!驚き過ぎだって」

あれ?私に笑いかけてくれてる。
どれぐらいぶりだろう、この感覚。


「杉本さん、阿部さんは話しかけても相手にしてくれないよ」

クラスの女子が杉本さんにヒソヒソと話してる。
丸聞こえだけど。


やだな…しんどいな。


「そんなの私が自分で決めるから」

わっ…かっこいい。。

女子たちはブツブツ言いながら教室を出て行った。


「めんどいよね、あーいうの」

「あ、うん…」

「行こ?理科室」


(回想終了)


私はこの時、すごくみっちゃんに救われた。


「みっちゃんらしいな」

「でしょ。今なら色々気づくことあるなぁって思う。中学の頃も前までは相手のせいにしてたけど私も壁作ってたなぁって今は思うし」

「そのマンション同じだった男は仲良かったんだろ?」

「そうだね。向こうが引っ越しちゃうまでは同じ学校だったから家のこととか聞いてもらってたかな。またいつか会えたらいいなぁ」


ガタッ


へ!?


あれ??
私、なんで寝転んでるんだ???


えっと
確か、急に暁斗くんに押されて寝転んだんだ、そうだそうだ。


「暁斗くん?どしたの…?」


簡単に言うと、押し倒されて私の上に暁斗くんがいる状態。


現実逃避を必死でしてみるけど、鼓動が速くなり続けてる。


「会ってどうすんの?」

「はい…?」

「その男と会ってどうすんの?」

「えっ別にどうもしないけど…元気だったら嬉しいなって思うけど……」

「俺はほかの女がどうであっても興味ない」


いや極論過ぎだわ、それは。
自惚れかもだけど、おそらくこれは

ヤキモチかな!?


「ほんとなにも深い意味ないんだけど」

「当たり前だろ。あったら殺す」


わー。ヤキモチ通り越してる気がするー。。


「暁斗くんが昔のこと話してって言ったのに…」

私はプイッと横を向いた。



暁斗くんの顔が私の顔の横にきたと思ったら、抱きしめられた。


「俺より先にいおのそばに男がいたって思ったらムカついてたまんない。そいつの記憶、全部消してやりたい」

なかなかの重々だな。。
だけど、暁斗くんに言われると不思議と嫌じゃなくて嬉しく思ったりもしてしまう。


「暁斗くんのヤキモチだ」

「は?そんなんじゃねぇよ」


自覚なし!?それはちょっと危険な気も…!?


「…わかってる。俺のしょーもなくて、どうしようもないヤキモチだよ…」

私を抱きしめる力が強くなった。


「イエーイ♪ヤキモチ妬いてもらったー」  

「バカ…」


暁斗くんからのキスが優しくて、心がポカポカになる。
昔を知ってもらえるのって嬉しいことなんだな。


暁斗くんの手が腰にやってきた。


パシッ

私はその手を掴んだ。


「へ…?」

暁斗くんらしからぬ、間抜けな声を出した。


「勉強!再開しよ!」

「おまえ…こんな時に…」

 
そりゃ、私だってもうちょっとイチャイチャしたい気持ちあるけど


「暁斗くんだって受験生で忙しいのに、こうして時間作ってくれてるんだよ?私、ちゃんと結果出したいから」


パチンッ
「あたっ!」

暁斗くんにデコピンをされた。


「そうだな。絶対結果出せよ」

「お任せあれ!!」



ー15分後ー

「だから!さっきもやったろ、この問題!」

「もっと優しく教えてくださいーっ」

「優しく教えてたら何回も間違えてんじゃねぇかよ!」



前言撤回したくなってきた。
結果、、、出せないかもしれない。


「やっぱり明日帰って、家でやります」

「は?1ヶ月みっちり教え込んでやるから覚悟しとけ」


明日、吐いてるかもしれない。