大嫌いな王子様 ー後編ー


「おせぇ…」

「ごっごめんなさい!!てっきり早くても8時ぐらいかなと思って…!」

「10時からオンラインの会議があんだよ。その前にまず勉強してる方がいいだろ」


ただいま、朝の7:15
暁斗くんと飯田さんが迎えに来てくれた。

そして、後部座席にドカッと座ってムスッとしている暁斗くんに謝り中。

私のことなのに貴重な時間を割いてくれて、しかもこうして迎えにまで来てもらって

もうね、ありがた過ぎるんだけど

一瞬だけ、ぜーんぶ差っ引いて心の中で叫ばせてください。


・・・会議とか知らんし!!だったら時間ちゃんと言えよー!!!!!


あー、スッキリした。

昨日あれから寝る前に今日の時間をメッセージで聞いたけど、朝また連絡するからって返事きて終わって、朝7時前にいきなり電話かかってきて「今から行く」なんだもん。

その電話で起きたからダッシュで用意して髪はボサボサのまま。


「とっとと乗れ」

朝イチだろうが、問答無用で俺様だ。

「伊織様、お荷物お預かりいたします」

「すみません。ありがとうございます」

1ヶ月ほどお世話になるから、着替えとかたくさん入れてたらバッグがパンパンになった。


暁斗くんの隣に座る。
車が走り出した。

「荷物多いな」

「しばらくお世話になるからたくさん持ってきたよ。夏だし汗もよくかくしね」


「置いてけよ」

「え?」

「帰る前に、俺ん家に荷物の半分ぐらい置いてけ」

「え…なんで…」


「俺がまた来てほしいから」

朝から刺激が強過ぎる笑顔をありがとうございます。


「いお、鼻血……」

「ぐえっ!!」

朝イチから煩悩が働き過ぎてる私。


外は蝉の元気な鳴き声が響いている。
そんな夏休みスタートの日。



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「あ?なんでこれがわかんねぇんだよ」

「すっすみません!!」

「違う!そこはこの式を使うんだよ!何回言えばわかんだよ」

「ごめんなさい〜!!!」


あー、前にあったな。このやり取り。
私やっぱりバカだ、、、
なんで高校で奨学金もらえたんだろ。


「チッ…時間か」

暁斗くんがスマホを見て立ち上がった。


くしゃっ
私の頭を撫でた。


「おまえも休憩。俺、15時には仕事終わらせれるからそれまでほどほどにな」

さっきまであんな言い方なのに、こうやって優しいんだから。


「お仕事、頑張ってね」

部屋のドアを開けかけた暁斗くんがこっちに戻ってきた。


チュッ


「いおがこの家にいんの、やっぱいいな」


は、、破壊力抜群の笑顔!!!!


「じゃ、あとでな」


ドクンドクンッ!!
私の心臓がうるさいぐらいドキドキしてる。

もつのか!?この夏休みの間、私の心臓はもつのか!?


部屋を見渡す。
私が出ていく前と全然変わってない。
絶対お掃除も常にしてくれている。


トクンッ
心があったかくなる感じがした。

頑張りたい。
大好きな人のためにも。


私は勉強を続けた。