大嫌いな王子様 ー後編ー


「以上5点で1,582円でございます」


「ありがとうございましたー」


誕生日の次の日、コンビニの面接に無事受かりそれから働き詰め。
なるべく早く仕事を覚えて、たくさんシフトを入れてもらえるようにしなきゃ。



「阿部さん、裏に入ってドリンク補充してくれる?」

「わかりました!」


暁おとにも無事報告が出来た。



(回想)

プルルル…

「なんだ?」


電話の第一声がそれ?

暁斗くんを10倍ぐらい俺様にした感じだな。
さすが親子。


…じゃなくて!!


「無事新しいアルバイトも受かりました。明日から働きます」

「そうか。わかった」


「…あの!」

「なんだ?」


約束…


「“約束”…守ってくださいね?」

「…あぁ。まずはクリアだ。また連絡する」


ツーツー…


勝手に切られるし、そもそもなにが【まずはクリアだ】よ。

ムカつく!!
あのクソジジイ!!!!(暁斗くんのお父さんだけど、正直今はそんなの関係ない)


これからどんな難題が来たって、絶対全部クリアしてやるんだから。


(回想終了)




「お疲れ様でしたー」

22時前。
今日の仕事も無事終わり、帰る時間。


「伊織様、本日もお疲れ様でした」

「飯田さん、今日もありがとうございます」


そう。
コンビニでのアルバイトを初めてから、仕事の日は飯田さんが必ず迎えに来てくれる。



車が走り出す。


「飯田さん、いつもすみません。私自分で帰れるので次からはほんとに大丈夫です」

「いえいえ、お迎えに来させてください。坊っちゃまに叱られてしまいます」



新しいアルバイトが決まりそのことを暁斗くんに伝えると、仕事の日は必ず飯田さんが迎えに来てくれることになってしまった。


「ご負担かけて申し訳ありません…」

「とんでもございません。夜道は危ないですし、なにより伊織様とお会いできるのが嬉しいので」


飯田さんはほんとに優しいなぁ。


「暁斗くんは元気ですか?」

「えぇ。お変わりございません。学業が忙しくなってきて仕事との両立がより大変にはなっているかと思いますが…」

「そうなんですね」


私の誕生日の日に会ってからもうすぐ3週間。
連絡は1日に数回取ってるけど会えてない。




・・・会いたいなぁ。

でも、仕事で忙しいんだもんね。
邪魔しちゃダメだよね。



「伊織様」

「はい」

「お相手のことを考えるのはとても大切なことですが、自分の気持ちを優先することも大切ですよ」



ドキッ!

飯田さんに今の自分の気持ちがバレてるんじゃないかと思った。


「え、えっと…」

「例えばの話です。大人の戯言だと思って聞き流してくださいね」


自分の気持ち。。。




—————————————


き、来てしまった。。


今私は優聖学園の校門前にいる。


確か今日は暁斗くん6限の日だから、まだ学校終わってないはずなんだよね。

あの日からさらに数日経ち、もう私は限界にきてしまった。
だって、会いたいんだもん。


だけど、優聖の門の前に他校の生徒はやっぱり目立つのかジロジロ見られる。




「あらあなた…」

恥ずかしくて俯いていると、聞き覚えのある声が…


「金澤さん…?」

「何してるの?ここで」

「…えっと暁斗くんを…あ、皆実くんを待ってまして…」


黙って私をじっと見る金澤さん。



「暁斗さんなら委員会であと1時間はかかるわよ」

「え!!??」


1時間かぁ。
今日はバイトも休みだし、待つか。



「わかりました、このまま待ちます。教えてくれてありがとうございます」


「…あなたってやっぱり変な人」


私が変???



「乗せてちょうだい」

「へ!?…わぁ!なんですか!!」


金澤さんのひと言で近づいてきたスーツの人たちに抱えられ、車に乗せられた。


この感覚、前にも味わったぞ!!


「あの…誘拐…??」

「なに言ってんの?あなたなんか誘拐してなんのメリットがあんのよ」


仰る通り!!!

それにしても、暁斗くんに負けないレベルの毒舌だなぁ。




少しして着いたのは、これまた豪邸。


表札が金澤になってるから、金澤さん家なんだろうな。
みんなほんとお金持ち…。


連れられるまま家の中にお邪魔する。



「お紅茶とケーキお願い出来るかしら?」

「かしこまりました」


お紅茶!なんと上品な言い方!



「あなた…さっきからキョロキョロして鬱陶しいんだけど」

「あ…ごめんなさい!素敵なお家だなと思って」



「…座りなさい」


金澤さんに案内されるがまま、とある部屋にやってきてた。




「ところであの…私はなんでここに…」

「よければケーキ召し上がって?美味しいのよ」


ダメだ、会話が成り立たない。


ひとまずケーキをひと口いただくことにした。