しーちゃんにもう会えない。
母さんにそう言われた瞬間、頭の後ろをガンッと何かで殴られたような心地がした。
『しーちゃんに会えないとか、嫌だよぉ』
彼女に会えないと分かった途端、目からは滝のように次から次へと涙があふれ出てきて止まらない。
しーちゃんに会えない。
あの笑顔をもう二度と見られない。
そう思うと、胸が痛くて痛くてたまらなかった。
誰かに会えないことが、こんなにも辛いなんて。
5歳の俺にとって、こんなことは初めてだった。
『母さん、しーちゃんに会いたいよ……!』
『璃久……そうだわ』
しーちゃんに会いたいと泣きわめく幼い俺に、母さんは花瓶に挿していた四つ葉のクローバーを持ってきた。
『それ、しーちゃんがくれたやつ!』
『まあ、見てなさい。璃久』
そして母さんはテーブルの上でテキパキと手を動かしたあと、俺に何かを渡してきた。
『はい、璃久。これを持っていなさい』
それは、長方形に切った白い画用紙に、しーちゃんがくれた四つ葉のクローバーが貼られたものだった。
『これは?』
『これはね、“栞”っていうのよ。母さん手作りの、世界にひとつしかない栞!』
『栞?』
得意げに言う母さんだけど、このとき栞というものを知らなかった俺は首を傾げる。



