黒澤くんの一途な愛



それから、赤松くんと村崎くんに手伝ってもらって、課題のノートを三人で職員室まで運んだ。


教室から職員室に行く途中、私は赤松くんたちからさっきの栞の話を聞いた。


「あの栞は、璃久の亡くなったお母さんとの思い出のものらしくて。璃久が、ずっと大切にしていた栞なんだよ」

「えっ、そうなの!?」


ていうか黒澤くんって、お母さんいないんだ。


「そういえば黒澤くん、私がおばあさんを助けたとき『祖母は俺の唯一の肉親』って言っていたような……」


私は、黒澤くんが前に話していたことを思い出した。


「ああ。璃久さんの両親は、10年前に交通事故で亡くなってるから。璃久さんは、おばあさんに育てられたんだよ」


そう、だったんだ……知らなかった。


「もう二度と戻って来ないお母さんとの思い出の物を、あんなふうに踏まれたりしたら、そりゃあ璃久も怒るよね」


赤松くんに言われ、私は申し訳ない気持ちになる。


「どうしよう。私、黒澤くんの大切なものを……」