「俺の栞、よくも踏んでくれたな。これは、俺の大事なモンなんだよ」
黒澤くんは井上くんの胸ぐらを掴んだまま、空高く持ち上げる。
「く、黒澤くんっ!」
私は慌てて、二人の間に割って入った。
「なんだよ、栞里」
黒澤くんが、射るような眼差しで私を見る。
「部外者は、引っ込んでろ」
普段よりも低い声で言われ、肩がビクッと跳ねる。
今日の黒澤くん、すごく怖い。
でも、ちゃんと言わなくちゃ……。
「ごっ、ごめんなさい。元はと言えば、黒澤くんの机にぶつかった私が悪いの」
「え?」
「だから、井上くんのことは責めないで! もし殴るなら、私を殴って……!」



