黒澤くんの一途な愛



やばい。気になって、何も考えずについ聞いてしまったけど……。


こういうヘアスタイルが好きでやってるのかもしれないし、もしかしたらデリケートな問題の可能性もあるから。


気安く聞いちゃまずかったよね。


「ご、ごめ……」

「いや。これは、去年転んだときにできたケガの痕が瞼に残っちゃってさ。それで……」


透くんは「俺、ドジなところあるから」と、笑いながら答えてくれた。


「栞里ちゃん、この本屋に来たってことは、もしかして今ここの近くに住んでるの?」

「うん。お父さんの仕事の都合で、この春に引っ越してきて。今は、福羽学園に通ってるんだ」

「えっ、福羽学園に!?」


透くんが、驚きの声をあげたそのとき。


「栞里」


向こうで、雑誌を見ていた黒澤くんがやって来た。


「あっ、黒澤くん!」

「誰? こいつ」


私のそばに立つ透くんを、黒澤くんが鋭い目つきでじっと見る。