黒澤くん……。
「出会ったばかりの私に、全力で守るって言ってくれるなんて。黒澤くんってすごいね」
「そうか? それを言うなら、花村も昨日見ず知らずの俺の祖母のことを助けてくれただろ? それに、俺たちはこれから1年を共に過ごす同じクラスの仲間だからな」
『仲間』
そう言われ、胸の奥が温かくなるのを感じた。
「ありがとう。私、福羽学園で頑張ってみるよ。だから、これからよろしくお願いします」
「ああ」
私が頭を下げると、黒澤くんが優しく微笑んでくれる。
「……っと。電話だ。もしもし?」
電話がかかってきたらしく、黒澤くんが席を立つ。
私も自分のスマホを確認すると、お母さんからメッセージが届いていた。
【栞里、まだ帰らないの?
今日は、塾のテストだったでしょう?】
そ、そうだった。引っ越した家の近くにある大手学習塾の入塾テストが、急遽明日から今日に変更になったの、すっかり忘れてた。
今から直行すれば、間に合う。
「ごめんなさい。私、今日は用があったのを思い出したので……先に帰ります!」
自分のお茶代をテーブルの上に置き、慌てて立ち上がった私の腕を、赤松くんが掴んできた。
「花村さん、ちょっと待って」
「な、何ですか? 私、急いでて……」



